研究課題
平成29年度はサンゴ骨格試料の採取と成長線解析および一次処理を行った。サンゴ骨格試料は喜界島にて採取し、現生およびすでに死亡したサンゴ群体を海中で発見した。サンゴ骨格試料は喜界島サンゴ礁科学研究センターにおいて岩石カッターで切断し、5 mm の厚さにスライスして、軟X 線画像を撮影し、年代を推定した。また、サンゴ骨格の酸素・炭素同位体比およびSr/Ca分析をおこなった。その結果、過去215年間分の骨格成長量および水温変動を得ることができ、本研究の目的を達成することが可能になった。また、これまで採取してきたアラビア海のサンゴ骨格試料のウラン/トリウム年代測定の結果、現生および小氷期、中世温暖期のサンゴ骨格試料をすでに得ており、地球温暖化は始まる前後でのアラビア海の脱窒量の変化の推定が可能になった。本研究で用いる試料はXRDおよび走査型電子顕微鏡により続成作用の影響を受けていないことを確認した。本研究課題の開始前に掘削したハワイ、カリブ海の試料からは骨格粉末試料の切削を行い、窒素同位体比分析に向けた準備をおこなった。また本年度はドイツのブレーメンで行われたワークショップにて、これまでの成果と今後の課題を同分野の研究者の前で報告し、試料やデータの共有について議論した。アーヘン工科大学(ドイツ)との共同研究により中央インド洋のサンゴ骨格コアの試料が加わり、本研究課題を遂行する上で重要な試料を得ることができた。すでに結果が出ている試料については国際誌への論文投稿に向けた準備をおこなっている。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度はこれまでおこなってきた国際共同研究により、アラビア海および中央インド洋から当初計画に予定していなかった試料を得ることができ、本研究が発展した。また、本年度購入した研究機器により、サンゴ骨格試料の一次処理の効率化をおこない、窒素同位体比と比較するための過去200年間の水温および大気二酸化炭素の吸収量の変化を明らかにできた。これらのデータは本研究結果の解明に非常に有用であり、当初、予期していなかった知見をもたらすことが期待できる。
引き続き研究対象地域での野外調査を実施し、本研究で用いるサンゴ骨格試料のサンプリングをおこなう。また、本年度に採取、一次解析をおこなった試料について、窒素同位体比分析を行い、地球温暖化に伴う海洋の窒素収支の変化を議論する。本研究の成果は国際学会および国内学会にて随時、成果報告を行うとともに、国際誌に論文を投稿する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 10件、 招待講演 3件)
Scientific Reports
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10.1038/s41598-017-04865-5
月刊海洋(号外)
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