研究課題
白瀬氷河及び周辺定着氷融解量の海洋観測データの解析第31次、32次南極地域観測越冬期間中(1990-92年)にリュツォ・ホルム(LH)湾の広域で実施された海洋観測のデータをもとに、氷河と海洋の相互作用という新たな観点で解析を行った。LH湾の中央部には、白瀬氷河へと続く海底峡谷が存在し、氷河末端近傍では1200m程の水深を有する。海底峡谷内の谷底では、約400m以深に温暖な周極深層水が分布しており、氷河近傍でも0℃を超える温暖な水塊が分布していた。対照的に400m以浅では、海底峡谷内の南北間で顕著な違いが見出された。北側(昭和基地とほぼ同緯度の海域)では、海面から400m深にかけて結氷点近傍の水温一様層が形成されており、これは冬季の対流混合で形成されたことによる典型的な水温構造であると考えられた。一方、南側の白瀬氷河末端近傍では、亜表層200~400m深に特異な特徴が見られ、峡谷内北側と比べて高い水温の水塊が楔状に貫入する構造を呈していた。この地点における流速の時系列データから、特異的な構造が見られた亜表層では、北向きの流れに伴い高温のシグナルが出現するという関連性が見られた。これらを総合的に解釈した結果、(1)沖合から流入した温暖な周極深層水は、主にLH湾の海底峡谷に沿って白瀬氷河末端域へと流入し、氷河底面を融解させる、(2)周極深層水は底面融解水と混合して変質し、氷河下の亜表層から北向きに流出する、という一連の白瀬氷河と海洋の相互作用が示唆された。氷河底面融解水の特徴として、低温シグナルが比較的顕著となるという解釈が従来あることに対して、「亜表層における特異な高温シグナルは、白瀬氷河底面融解水のシグナルである」という新たな解釈を提示した。このように、交付申請書に記載した「研究の目的」及び「研究実施計画」について、上記のように直接的に研究目的に対して成果を上げる事となった。
2: おおむね順調に進展している
前述のように、交付申請書に記載した「研究の目的」及び「研究実施計画」について、直接的に研究目的に対して成果を上げる事となった為。
今後は、前述の【白瀬氷河及び周辺定着氷融解量の海洋観測データの解析】と同様のデータ解析を最新の観測データを用いて複数年にわたって継続実施し、複数年の知見を蓄積する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 6件、 査読あり 8件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件)
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