研究課題
昨年度は、ストレッチ格子法による領域対象(日本周辺)高解像度実験を行い、大気汚染物質輸送モデルNICAMで計算されたPM2.5が観測結果を概ね再現することが確かめられた。今年度はNICAMを用いて全球高解像度実験を行い、昨年度検証を行った日本付近以外の場所におけるPM2.5の再現性を検証した。従来のモデルでは100-300km程度のモデル解像度が標準的であるのに対して、本研究では14kmの世界で類を見ない高解像度に設定した。その結果、北極へのブラックカーボン(PM2.5の一次生成粒子)や硫酸塩(PM2.5の二次生成粒子)の輸送が非常に良く改善され、従来のモデルでは難しかった極域でのPM2.5成分の濃度季節変動(特に春季の高濃度)を再現することが確かめられた。これは高解像度にすることによって、モデルの雲の表現がより現実的となり、降水のある領域が減少することで、PM2.5の除去量が減少し、輸送が促進された結果であると考えられる。また、中国などにおける大気汚染物質の発生源付近でのPM2.5の再現性は、極域ほど劇的な変化は見られなかったが、低解像度実験結果よりも精度が向上することも確かめられた。研究課題でターゲットとしている二次生成成分(硝酸塩と二次生成有機炭素エアロゾル)に関する長距離輸送のシミュレーションは非常に複雑で検証困難だが、大気環境及び気候影響に非常に重要な物質であるため、今後はこれらの物質の全球及び領域高解像度実験での結果に注目したい。
2: おおむね順調に進展している
モジュール開発のベースとなるNICAM高解像度計算が、領域でも全球でも安定して稼働することが確かめられ、PM2.5シミュレーションが概ね良好なパフォーマンスであることがわかり,二次生成粒子の生成過程の精緻化を進められる.
NICAMの高解像度版を用いて,全球及び領域規模における二次生成粒子シミュレーションの改善を図る
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件)
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