研究課題
化学物質の中には、胎児期に曝露すると成長後の行動異常を引き起こすものがあることが分かっている。着目すべきは、これら化学物質の多くがエピゲノムに影響し得ることである。また、脳内の免疫細胞であるミクログリアがスパインやシナプスの貪食を介して発達期の神経回路網の形成に関わることが明らかになりつつあり、ミクログリアと行動異常との関連が議論されている。これらの背景から、本研究では、『化学物質はミクログリアの遺伝子発現を長期的に変化させ、その結果ミクログリアが活性化し、異常な神経回路網が形成される』との仮説を検証する。前年度に行ったCap analysis gene expression-sequence(CAGE-seq)により、バルプロ酸胎児期曝露により海馬内で発現が増加するケモカインを同定した。このケモカインは、海馬内のCD11b陽性細胞において発現が増大すること、さらに、クロマチン免疫沈降アッセイにより、プロモーター部位のヒストン修飾が変化していることも明らかとなった。ケモカイン受容体アンタゴニストを母マウスに飲水投与すると、バルプロ酸による行動異常と海馬興奮-抑制バランスの興奮側シフトが改善した。従って、バルプロ酸の胎児期曝露は、仔の海馬におけるケモカイン発現上昇を介して異常回路網の形成と行動異常を引き起こすと考えられる。また、バルプロ酸に加えて、ネオニコチノイド系農薬の母マウス飲水投与実験を開始し、仔における空間認知機能と社会性の異常が生じることを明らかにした。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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