紙製造にはパルプが必須である。従来のパルプ製造ではクラフトパルプ法(KP法)が主流で、廃液を燃料として有効利用する方法が確立されている。しかしながら、化学薬品(硫化ナトリウムおよび水酸化ナトリウム)の使用によりパルプに不純物が含まれることやホロセルロース以外の成分を利用できない等のデメリットがあった。そこで本研究では、環境保全型新規パルプ生産プロセスの開発のために、高活性水蒸気処理と粉砕処理を前処理として用いた。この処理は水のみを使用するため、生産されるパルプは不純物のない状態で取り出すことができる。また、リグニンは不純物を含まない(硫黄フリー)だけでなく、低分子量化されているので、高付加価値のエポキシ樹脂(電子基板材料用に利用可)に変換でき、バイオマスを無駄なく利用することが可能である。この新規生産法により得られたパルプとこれを用いて軽量、高強度であるCNF(セルロースナノファイバー)を製造し、これらをコンポジット(複合)することでCNFを樹脂の補強材としてだけではなく、新しい強度のある紙作りを試みた。本年度は、強度があり成長速度が速いといった特徴をもつ孟宗竹を原料として実験を行った。得られたCNFの機械的特性を検討し、市販品と比較評価を行った。結果として環境低負荷な前処理方法である高活性水蒸気処理(1-4 MPa)と粉砕処理(10 s)を用いて、市販のCNFに匹敵する強度を持つCNFを製造することができた。
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