研究課題
都市ごみ焼却飛灰や廃電気・電子製品(e-waste)野焼き土壌等の不均一固相における有機ハロゲン化合物の熱化学的生成には「共通した支配機構(共通機構)」の存在が示唆されている。本研究では、環境中の不均一固相を対象として、そこでの有機ハロゲン化合物の熱化学的生成の「共通機構」提示を目的とする。【仮説1】金属による生成促進の共通機構、【仮説2】炭素のハロゲン化:塩素と臭素の共通性、の2つが本研究の仮説である。平成30年度は、仮説1および仮説2を橋渡しするためのモデル実験として、金属種として「金属銅」を出発物質とした炭素のハロゲン化に関する実験を実施した。前年度明らかにした臭素化難燃剤を臭素源とした金属銅の影響との類似性から、ポリ塩化ビニル(塩ビ、PVC)を塩素源としたモデル実験を実施した。その結果、PVC由来の塩素によって金属銅が塩素化することで炭素の塩素化を促進し、同時に塩素化ダイオキシン類を発生させることが明らかとなった。これまでの知見をまとめると、金属銅が有機ハロゲン化合物と共存して酸化的環境下で加熱されることで、銅が熱化学的にハロゲン化すると同時に芳香族炭素のハロゲン化が促進されるという「共通機構」が明らかとなった。また、都市ごみ焼却灰における金属種としてクロム(Cr)に着目したモデル実験を推進し、芳香族炭素の塩素化および塩素化ダイオキシン類の生成に関する機構ベースの知見を得ることが出来た。一方、有機ハロゲンの総量を定量するために、難水溶性画分や抽出可能性画分に基づいた定量方法を確立し、個別の有機ハロゲン化合物との比較や、総量に準じる値と媒体中の他元素との相関分析を実施可能な状況を整備できた。
2: おおむね順調に進展している
金属銅に着目した系を重点的に検討した結果、塩素と臭素のハロゲン間で共通した炭素のハロゲン化機構を明らかにすることが出来た。本成果は、研究課題全体の目的である仮説1および仮説2の実証的な研究成果を示すものである。また、銅以外にもクロムに関してのモデル実験による成果を得られた。また、ハロゲン総量の測定系についても十分に検討し、今後実施可能な状態に確立ができた。実試料に関しては、都市ごみ焼却灰、e-waste野焼き土壌等の燃焼プロセスの試料に加えて、森林土壌、大気粉じんやハウスダスト等の非燃焼プロセスの試料に対して媒体横断的な検討を進めた。また、2018年度の夏季に都市ごみ野焼きサイト(ザンビア)でのサンプリングを実施し、統計的なデータ解析が可能な試料を収集することができた。以上より、研究は順調に進展していると考えられる。
モデル系で得られた知見等を論文化する。新たに収集した実試料に対して有機ハロゲン化合物や元素を定量し、統計的なデータ解析を通じて、実試料における共通機構の理解を深める。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 7件、 招待講演 1件)
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