研究課題
本研究では、研究代表者らが推進してきたナノマテリアルの安全性確保研究(物性-動態-毒性の連関解析)を機能性食品に応用することで、有用で安全な非晶質クルクミンを開発し、昨今の課題となっている品質担保のための評価手法としての有用性を実証することを目的としている。そこで、本年度は、まず、現行開発品の動態(ADME)に焦点をあてて解析を試みた。水溶性が高いクルクミン製剤を開発できたため、3ヶ月間自由飲水させた後の組織分布を定量比較したところ、既存の市販製剤では、水溶性・吸収性が低かったことと相関し、各種臓器でクルクミンはほとんど検出されなかった。その一方で、現行開発品は、肝臓や脾臓、肺を中心に分布が観察され、高吸収性化体だからこその有用性が示唆された。また、安全性情報として重要な排泄経路を検証したところ、市販製剤では、これまでの報告同様、糞中で検出され、そのほとんど全てが未変化体であった。その一方で、現行開発品では、糞中で検出されたクルクミン量自体少なく、その半数がグルクロン酸抱合体といった代謝産物であった。さらに興味深いことに、現行開発品では、市販製剤とは異なり、尿中でも検出された。以上の検討から、市販製剤は、吸収されることなく、そのまま糞中に排泄されるのに対し、現行開発品では、吸収されたクルクミンが代謝を受けて、腸管循環しながら糞中と、そのままに尿中に排泄されていることが示され、クルクミンも吸収さえされれば、尿中排泄されることがはじめて示された。また、効能/安全性を評価する一環として、先ほどと同様に、半年間自由飲水させて、血中マーカーや体重・臓器重量を測定した。その結果、コントロール群に比較して体重や主要な臓器の重量に変化が認められなかったのに対し、血中トリグリセリド量が低下傾向にあり、有用で安全な機能性食品になりうることが示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
交付申請書に記載した研究実施計画を達成したうえ、クルクミンも吸収さえされれば、尿中排泄されることをはじめて明らかにしたため。
現行開発品の自由飲水により、血中トリグリセリドが低下する傾向が観察されたため、高脂肪食負荷モデルマウスなどを活用し、市販製剤との比較など、その詳細を解析する。また、安全性評価についても、体重や臓器重量のみならず、血球数の変動や、生化学マーカーの変動などを含めて、より詳細に検証を試みる。
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