研究課題
本研究では、研究代表者らが推進してきたナノマテリアルの安全性確保研究(物性-動態-毒性の連関解析)を機能性食品に応用することで、有用で安全な非晶質クルクミンを開発し、昨今の課題となっている品質担保のための評価手法としての有用性を実証する。昨年度までに、動態解析を試みた結果、既存の市販製剤に比較して、高吸収性の現行開発品は、各種臓器に分布し、胆汁や尿中排泄されることを先駆けて示した。また、これら製剤を半年間自由飲水させた結果、体重や主要な臓器の重量に変化が認められなかったのに対し、血中トリグリセリド(TG)量が低下傾向にあることが示された。本年度は、まず、TGの低下作用を詳細に解析すべく、高脂肪食負荷マウスを活用し、TGを低下させるBezafibrate(Bez)や市販製剤と比較した。まず、コントロール(Cont)群に比較して、Bez投与群では、体重やTGが有意に減少していることを確認したうえで、市販製剤と現行開発品投与群のTGを比較したところ、市販製剤投与群では、Cont群と変化が認められなかったのに対し、現行開発品投与群では、血中TG濃度が減少する傾向が観察された。ここで、現行開発品は、Bezと同様に、コレステロールには影響を与えず、TGのみ低下させうることから、同様の機序が推察された。そこで、Bezの作用点であるPPARαの活性化を評価すべく、肝重量(マウスではPPARαの活性化で、肝細胞が増殖するため)を比較した。その結果、Bez投与群と同様に、現行開発品投与群においても、肝重量が有意に増加しており、PPARαを活性化していることが示唆された。また、安全性についても、より詳細に解析すべく、血球数の変動に与える影響を評価した。その結果、白血球やリンパ球、好中球などに対し、正常範囲を超える有意な変動は認められず、安全性の観点からも有用な機能性食品であることが示された。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した研究実施計画を概ね達成したため。
現行開発品は、PPARα経路を活性化することが示唆されたため、PPARαの直接的な活性化の関与や、その下流でβ酸化の律速酵素であるACOX1量を定量比較することで、機序を明らかにし、その品質担保を図る。また、反復投与時における生化学マーカーの変動を解析し、組織障害に与える影響を精査することで、安全性についても詳細に評価を試みる。
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