研究課題/領域番号 |
17H04729
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
箱崎 真隆 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 特任助教 (30634414)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 年輪年代法 / 酸素同位体比 / 年代測定 / 東北日本 / 文化財科学 / 考古学 / 標準年輪曲線 |
研究実績の概要 |
今年度は,前年度までに得られた東京都愛宕下遺跡出土材の分析を進め,さらに東北日本の遺跡において追補資料を収集することを計画した。また,酸素同位体比年輪年代法の有用性を認知してもらうため,東北地方および北海道の遺跡における出土材の年代測定,研究成果に基づく論文出版と学会発表等を計画した。 東京都愛宕下遺跡出土材の分析の結果,15-17世紀の酸素同位体比データを得ることができた。これらは東北日本版標準年輪曲線と極めて高い相関を示し,東北日本の木材であるという確証も得られた。これらのデータを追加することで,東北日本版標準年輪曲線は西暦417年-1679年まで拡張された。 古い時代の東北日本のデータを得る資料として,北海道余市町安芸遺跡,秋田県横手市一本杉遺跡,秋田県美郷町中屋敷2遺跡,秋田県秋田市戸平川遺跡の出土材を収集することができた。次年度は,これらの分析を進め,標準年輪曲線の基盤データ獲得を目指す。 今年度の大きな成果として,東北日本版標準年輪曲線によって年代決定された宮城県多賀城跡出土材に西暦917年の年輪が認められたことが挙げられる。これに基づいて考古学的考察が大きく深まり,これまで西暦915年に起きたと考えられてきた「十和田カルデラ10世紀噴火(To-aテフラ)」の年代が,917年以降であった可能性が大きく高まった。研究代表者は,この成果を国際火山噴火史情報研究集会にて発表した。 そのほかの成果として,北海道上ノ国町の国史跡勝山館跡,青森県青森市の国史跡高屋敷館遺跡の出土材の年代決定が挙げられる。これらは北日本の中近世史において非常に重要度が高い遺跡であり,高精度な年代情報がもたらされたことによって,新たな歴史学的知見が生まれている。 酸素同位体比年輪年代法の有用性を広く一般にも認知してもらうため「季刊考古学」に酸素同位体比年輪年代法の概説論文を寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画が軌道に乗り,目標としていたデータの獲得,資料の収集が進んでいる。また,年代測定の成功事例も着実に増えており,本研究の進展に協力を申し出る研究者や研究機関も増加の一途にある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も資料の分析と収集を継続する予定である。併せて手元にある現生木の分析も進めることで,過去320年間の空白をすべて埋めることを次の目標とする。次年度は「号外地球」に論文投稿を予定している。また,中央大学や若狭三方縄文博物館等での公開講演も予定している。今後の調査,研究を円滑に進めるためにも,次年度以降もこのような情報発信を継続する。
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