研究課題/領域番号 |
17H04730
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
石村 大輔 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (00736225)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 2016年熊本地震 / 微小断層変位 / 熊本県阿蘇市 / 阿蘇カルデラ / テフラ |
研究実績の概要 |
平成29年度は、2016年熊本地震で微小変位が生じた阿蘇市宮地において微小変位の測量、トレンチ調査、ハンディジオスライサー調査を行った。その結果、本地点では2条の微笑変位が確認され地溝状の変形が生じたことが明らかとなった。いずれも上下変位は5cm程度であり、北側の断層沿いには右横ずれ変位が2-3cm認められた。北側の断層上でトレンチ調査を、南側の断層上でハンディジオスライサー調査を行った。トレンチ調査では約4000年以降の堆積物が連続的に観察され、明瞭な断層が出現した。トレンチ内では、阿蘇火山起源の火山灰(下位からACP1、KsK、OjS、N2S)が複数確認できた。壁面観察による断層の性状と各地層における上下変位量の分布から、本トレンチでは2回の断層活動(2016年の断層活動含む)が読み取れた。2016年の活動に先行する断層活動は、N2SとOjSの間に推定され、阿蘇カルデラ内の遺跡に記録された開講亀裂や布田川断層の活動履歴とも整合的である。ハンディジオスライサー調査でも同様の結果が得られ、宮地に出現した微小変位は過去にも同じ場所で同様の断層運動が生じたと考えられる。この結果から、阿蘇市宮地に現れた微小変位は、2016年に偶然現れたものではなく、過去にも同様の断層運動が生じており、かつその時期は布田川断層の過去の活動とも調和的であることがわかった。また、上記の結果から、2016年熊本地震時に出現した主断層から離れた微小変位地点の多くは、繰り返し活動しており、かつその活動は布田川断層の活動と同時である可能性がある。今後、他地点でも同様の調査を実施することで、微小変位地点の古地震情報を主断層の活動履歴として利用できるかどうか検証することが可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は当初の予定通り調査を終えることができた。その成果から、本科研の目的である、微小変位地点において(1)断層が繰り返しているか、(2)微小変位が地層から読み取れるか、(3)微小変位が生じた断層位置を地形から読み取り可能か、を検証することができた。阿蘇市宮地地点では、(1)断層は繰り返している、(2)微小変位が地層から読み取れる、(3)微小変位が生じた断層位置は地形から読み取れない、という結果であった。また本地点の断層運動は、布田川断層の過去の活動と対応している可能性がある。したがって、本地点の断層はそれ自身が単独では活動しないことを示唆しており、その運動像に関しても情報を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2016年以降に実施された古地震調査を鑑みて、平成30年度以降は阿蘇カルデラ外における微小変位地点における古地震調査を実施する予定である。特に主断層である布田川断層については中央から東部にかけての古地震履歴が少なく、その活動度(頻度や変位速度)に関する情報に乏しい。平成29年度調査の経験から微小変位地点においても断層は繰り返し活動し、その活動は布田川断層の活動と同時である可能性がある。そこで阿蘇カルデラ外で布田川断層に近い場所に出現した微小変位地点を対象に現地調査を実施し、適した場所で古地震調査を実施する。
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