研究課題/領域番号 |
17H04732
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
王 欣 東京理科大学, 理工学部建築学科, 助教 (90610626)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 波動伝播理論 / 畳み込み計算 / 超高層建物 / 振動台実験 / せん断波速度 / 分散 |
研究実績の概要 |
本研究では、建物の振動は波動伝播の視点から解釈して、波動伝播速度の変化から建物の損傷状況を精度良く検出する手法を構築することを目標として、2019年度では、この手法を超高層建物に実用する際に、曲げ変形の影響によってせん断波速度の分散、いわゆるせん断波速度は建物の振動モードによる異なる現象を中心に曲げせん断モデルを用いて検討した。また、大型実大振動台実験施設Eーdefenseで行なった18階建ての鉄骨造超高層建物の長周期地震動による崩壊までの加振実験のデータを用いて建物の弾性状態から、梁端の塑性化、降伏、亀裂、破断、さらに柱の座屈して建物の層崩壊までに至る破壊の進展とともにせん断波速度の低下を定量的に検討した。また、元々の波動波(建物の基礎と屋上での重複反射した波動場)から構築した新しい波動場の僅か一つの上昇波と一つの下降波の振幅スペクトルの比から減衰を評価する研究を試みた。構造物の応答特性を評価する手法をスマートデバイスに実装して、建物や橋梁に設置して長期観測を実施している。 また、大地震後,迅速な構造損傷の検出は「継続使用」,「補強」,「解体」などの意思決定に不可欠である。鉄骨造建築構造物において梁端破断は構造物が補強可能か否かの重要な判断根拠であり,その検出が非常に重要な課題となっている。梁端破断により,層のせん断剛性が低下し,層内でせん断波の伝搬時間とともに構造物全体の固有周期の増加に繋がる。しかし,その変化は構造物の非線形応答や非構造部材の損傷などの要因と関連するので,確実に梁端破断の発生および発生位置の判断が困難である。畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて加速度波形から梁端破断により生じた衝撃波の特徴を認識し,加速度記録の波形から直接に梁端破断を検出する方法を開発することを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画書では、波動場の再構築から建物の減衰評価に関する研究を計画に含まれてない内容でしたが、研究の進展に伴って検討可能と認識され、試して行なった。来年度も続いて実行していく内容として考えられる。また、波動伝播理論の限界を認識して、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)というディープラーニングの手法の一つを活用して、梁端の破断を加速度波形から直接に認識する方法は計画を立てた当初認識できなかったが、追加して行なった。
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今後の研究の推進方策 |
波動伝播理論を超高層建物に実用する時に曲げ変形成分の割合によってせん断波速度の評価精度に与える影響をモデルで検討する。また、この手法を既存建物のヘルスモニタリングに実用することを計画している。更に、新しい内容として減衰の評価を続きで行う予定である。
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