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2018 年度 実績報告書

特定の脳細胞選択的に薬剤送達する高分子集合体の開発と脳神経系疾患治療への展開

研究課題

研究課題/領域番号 17H04742
研究機関東京大学

研究代表者

安楽 泰孝  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (60581585)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード薬剤送達システム / 高分子集合体 / 血液脳関門
研究実績の概要

アルツハイマー病(AD)に代表される脳神経疾患を効果的に治癒するためには、血液脳関門(BBB)と呼ばれる生体内バリアを通過するだけでなく、脳実質部において、標的とする細胞、もしくは病因物質にのみ認識されることが必要不可欠である。前年度までに、BBBを通過するための1stリガンド(グルコース分子)に加えて、BBB通過後の脳実質内での挙動制御を目的とする2ndリガンドとして、ニューロンに多く局在しグルタミン酸を取込むグルタミン酸トランスポーターを標的としたグルタミン酸リガンドを表面に搭載したデュアルリガンド搭載高分子ミセルを構築することに成功している。
当該年度は2ndリガンドとして上記のグルタミン酸誘導体リガンドに加え、ファージディスプレイ法により探索した運動ニューロン選択的に認識するペプチドを搭載した直径30 nmほどで単分散な高分子ミセルを構築することに成功した。特にペプチドを搭載した高分子ミセルについては、研究計画書に基づき、核酸医薬であるsiRNAを搭載した高分子ミセルを開発した。ここではニューロンに多く発現し、AD発症に関係すると言われるアミロイドベータ(Aβ)産生に関与するβ-セクレターぜ(BACE1)の発現を抑制するsiBACE1を搭載し、(1) グルコースなし、(2) グルコースのみ (1stリガンドのみ)と比べ、(3) グルコース+ペプチドリガンド (デュアルリガンド)を用いた場合に、標的とするタンパク質の発現を優位にノックダウンすることに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

高分子の精密な分子設計からin vitro及びex vivoでの機能評価、さらにはアルツハイマー病モデル動物を用いた治療効果の検討へと展開される本研究計画において、下記の特筆すべき成果を得ることに成功した。
(1) BBB通過に必要なグルコース分子(1stリガンド)に加え、ファージディスプレイで探索した運動ニューロン選択的に認識するペプチド(2ndリガンド)を表層に搭載した直径30 nmで単分散なデュアルリガンド搭載高分子ミセルを開発することに成功した。
(2) 当初の計画を前倒しして、核酸医薬(siRNA)を搭載したデュアルリガンド搭載高分子ミセルを開発し、in vivoにおいて標的とするタンパク質の発現を、既存技術と比べ優位に抑制することに成功した。

今後の研究の推進方策

「現在までの達成度」に記述した様に、本研究は当初の計画以上に進展していると自己評価される。最終年度となるH31年度はについては、計画書に基づき、アルツハイマー病モデルマウスを用いて核酸医薬を封入したデュアルリガンド搭載高分子ミセルの機能評価を中心に実施する。
具体的には、
(1) 前年度までに調製に成功したグルコース/ペプチドをリガンドとして表層に修飾したデュアルリガンド搭載高分子ミセルを用いて、アルツハイマー病モデルマウス(APP/PS1)を用いて、血中での安定性や臓器分布、特に脳への集積量をマルチプレートリーダー等を用いて確認する。
(2) 全身投与による各種標的細胞への取り込みをin vivo共焦点顕微鏡などを用いて評価する。その際にニューロンにおいてGFPを発現する遺伝子組み換えマウスを用いて評価することで、in vivoにおいてリアルタイムでナノ粒子の挙動を評価することを検討する。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 4件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Glucose transporter 1-mediated vascular translocation of nanomedicines enhances accumulation and efficacy in solid tumors2019

    • 著者名/発表者名
      K. Suzuki, Y. Miura, Y. Mochida, T. Miyazaki, K. Toh, Y. Anraku, V. Melo, X. Liu, T. Ishii, O. Nagano, H. Saka, H. Cabral, K. Kataoka
    • 雑誌名

      J. Control. Release

      巻: 301 ページ: 28-41

    • DOI

      10.1016/j.jconrel.2019.02.021

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Self-assembly of siRNA/PEG-b-catiomer at integer molar ratio into 100 nm-sized vesicular polyion complexes (siRNAsomes) for RNAi and codelivery of cargo macromolecules2019

    • 著者名/発表者名
      B. -S. Kim, S. Chuanoi, T. Suma, Y. Anraku, K. Hayashi, M. Naito, H. -J. Kim, I. C. Kwon, K. Miyata, A. Kishimura, K. Kataoka
    • 雑誌名

      J. Am. Chem. Soc.

      巻: 141 ページ: 3699-3709

    • DOI

      10.1021/jacs.8b13641

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Therapeutic polymersome nanoreactors with tumor-specific activable cascade reactions for cooperative cancer therapy2019

    • 著者名/発表者名
      W. Ke, J. Li, F. Mohammed, Y. Wang, K. Tou, X. Liu, P. Wen, H. Kinoh, Y. Anraku, H. Chen, K. Kataoka, Z. Ge
    • 雑誌名

      ACS Nano

      巻: 13 ページ: 2357-2369

    • DOI

      10.1021/acsnano.8b09082

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Targeting ability of self-assembled nanomedicines in rat acute limb ischemia model is affected by size2018

    • 著者名/発表者名
      M. Suhara, Y. Miura, H. Cabral, D. Akagi, Y. Anraku, A. Kishimura, M. Sano, T. Miyazaki, N. Nakamura, A. Nishiyama, K. Kataoka, H. Koyama, K. Hoshina
    • 雑誌名

      J. Control. Release

      巻: 286 ページ: 394-401

    • DOI

      10.1016/j.jconrel.2018.07.049

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 難治性脳神経系疾患の治療を指向した薬剤送達システムの開発2019

    • 著者名/発表者名
      安楽泰孝
    • 学会等名
      日本薬学会 第139年会
    • 招待講演
  • [学会発表] 「難治性疾患の治療/診断を指向したナノマシンの創製 ~脳神経系疾患の革新的治療技術の開発~」2018

    • 著者名/発表者名
      安楽泰孝
    • 学会等名
      新化学技術推進協会 ライフサイエンス技術部会 材料分科会  講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] ほったらかしで健康になる? -体内ナノマシンによる医療革命-2018

    • 著者名/発表者名
      安楽泰孝
    • 学会等名
      科学未来館 トークセッション
    • 招待講演
  • [学会発表] グルコース濃度に応答して血中から脳内に薬剤を届ける高分子ミセルの開発2018

    • 著者名/発表者名
      安楽泰孝、桑原宏哉、横田隆徳、片岡一則
    • 学会等名
      第67回 高分子学会年次大会
  • [学会発表] 難治性疾患の治療/診断を指向したナノマシンの創製 ~脳神経系疾患の革新的治療技術の開発~2018

    • 著者名/発表者名
      安楽泰孝
    • 学会等名
      第15回Tonomachi Cafe
    • 招待講演
  • [図書] アルツハイマー病発症メカニズムと新規診断法・創薬・治療開発2018

    • 著者名/発表者名
      新井平伊、安楽泰孝、他85名
    • 総ページ数
      460
    • 出版者
      エヌ・ティー・エス
    • ISBN
      4860435788
  • [備考] 東京大学大学院バイオエンジニアリング専攻 カブラル研

    • URL

      http://www.bmc.t.u-tokyo.ac.jp

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公開日: 2019-12-27  

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