研究課題
<共培養系の確立>筋管細胞(myotube)とマクロファージの共培養系を確立した。myotubeへの分化を機能的に確認するため、電気刺激を実施したところmyotubeの収縮運動が確認された。マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)を初代培養した。myotubeの培養上清をBMDMの培養皿に移し、BMDMの反応を解析した。さらに、骨格筋から放出される細胞外小胞(EV)の効果を検証するため、myotube培養上清から超遠心を用いてEVを抽出することに成功し、その実態をナノトラッキングシステムおよびCD63を用いたflowcytometry解析によって検証できた。そして、EVのBMDMへの添加実験系を確立した。<myotube放出因子のマクロファージ極性に対する影響>myotubeにより産生される因子がBMDMのM1極性亢進へ与える影響を検討した。リポポリサッカライド(LPS)をBMDMに添加し、その後M1極性を示す遺伝子(M1 gene)を測定した結果、myotubeの培養上清およびmyotube由来EVで培養されたBMDMではM1 geneの発現亢進が有意に抑制された。<マクロファージM1極性制御の機序>骨格筋EVによるM1極性抑制効果の機序を検討するため、EVのメタボロミクスを実施した。骨格筋は多くのメタボライトを生成し、マクロファージはメタボライトおよび細胞内の代謝動態が細胞機能に強く影響するためである。その結果、EV内にグルコース代謝産物が多く存在することが確認された。さらに、グルコース代謝阻害物質である2-デオキシ-D-グルコース、あるいはグルコース不含有の培地で培養したmyotubeからEVを抽出しBMDMに添加すると、EVによる有意なM1極性抑制効果が消失した。上記について、共同研究先のハーバード大学公衆衛生大学院での実験手法を神戸大学でも再現した。
2: おおむね順調に進展している
共培養の実施、myotube培地からの細胞外小胞(EV)の抽出・添加、細胞外小胞の組成解析を計画通り進めることができ、培養上清および抽出EVによるマクロファージM1極性制御効果を検出することができた。これらの計画していた検討に加え、メタボロミクスやグルコース代謝抑制物質をもちいて、メタボライトの関与を検討することができた。一方、超音波や電気刺激による増強効果の検証については課題が残ったが、実験を実施するための機器作成および実験環境が確立した。また、共同研究先から学んだこれらの研究手法を、日本で再現することに成功した。これらを総合的に考慮し、順調に進捗していると判断した。
前年度同様、リポポリサッカライド(LPS)にてBMDMにおけるM1 gene発現を亢進させてその抑制効果を検証し、さらに、骨格筋EVによるM2 gene発現に対する促進効果を分析するため、IL-4添加下BMDMとEV刺激下BMDM間でM2 gene発現程度を比較する。そして、その背景にあるマクロファージ代謝動態の変化を細胞外フラックスアナライザーにて解析し、骨格筋EVの投与が解糖系および酸化的リン酸化系に与える影響を明らかにする。骨格筋グルコース代謝調整(グルコース代謝抑制物、物理刺激による代謝促進)による細胞外小胞およびBMDM内代謝産物の変化をメタボロミクスにて解析し、それらとマクロファージ内エネルギー代謝動態および極性制御の関連性を分析する。これらにより、マクロファージ極性を制御するための骨格筋刺激ストラテジーを発掘する。
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