研究課題
<培養系・実験系>収縮能を有する筋管細胞(myotube)、骨髄由来マクロファージの培養管理、およびmyotube由来細胞外小胞(EVs)の抽出、添加を安定的に行えている。さらにCD63 exosomeマーカーを用いたMyotube由来EVsのflow cytometry解析によって、採取されるEVsは主にexosomeで構成される(CD63陽性率>80%)ことがわかった。<exosome放出制御>高強度のパルス超音波刺激によって、exosomeの放出が2.5倍増加すること、およびその超音波強度依存性が明らかになった。また、超音波照射によって細胞内カルシウム濃度が増加することがわかり、細胞内カルシウム濃度の調整が超音波によるexosome放出促進の機序であることが示唆された。超音波照射誘発性exosomeの免疫細胞に対する効果の検証について準備を進めている。<myotube放出exosomeのマクロファージ極性に対する影響>Myotube由来exosomeによるマクロファージM1極性抑制について、治療時間依存性とM1gene選択性が検出された。すなわち、短時間(3時間)のexosome添加ではTNF-a、IL-6、IL-1Bが抑制される一方、長時間(24時間)のexosome添加では、TNF-aは抑制されるものの、IL-6およびIL-1Bは発現が亢進することがわかった。このことから、骨格筋exosome濃度上昇を治療的に活用する上で、血中濃度を時間的に管理することの必要性が示唆された。<マクロファージM1極性制御の機序>上記の時間依存をもたらす因子について、メタボロミクスを活用して検証を行っている。グルコース制限培地で培養したmyotubeから放出されるexosomeには、マクロファージ内ミトコンドリア呼吸を高める結果が得られているため、マクロファージ機能制御におけるアミノ酸(グルタミン)代謝産物の関与が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
共培養の実施、myotube培地からの細胞外小胞の抽出・添加、細胞外小胞の組成解析を計画通り安定して進めることができ、機序となる因子の解明についても進捗があった。機序となる代謝産物の絞り込みが不十分な点、M2 genesへの影響が把握できていない点は、次年度に課題を残したと判断される。一方で、エクソソーム添加時間における特徴的な依存性を明らかにできたことは、今後の研究進捗に大きな影響を与え、治療的応用の実現に近づく重要な要素である。当該年度の発見が次年度の研究加速に与える影響についても考慮し、おおむね順調に進捗していると判断した。
前年度同様、リポポリサッカライド(LPS)にてマクロファージにおけるM1 gene発現を亢進させてその抑制効果を検証し、さらに、骨格筋exosomeによるM2 gene発現に対する促進効果を分析するため、IL-4添加下マクロファージとexosome刺激下マクロファージ間でM2 gene発現程度を比較する。そして、各種栄養制限した(グルコース、グルタミン制限)培養下で放出される筋exosomeのマクロファージへの影響を、M1・M2 gene発現、および代謝フラックス解析によるエネルギー代謝動態(解糖系、ミトコンドリア呼吸)をアウトカムとして解析する。さらに、myotubesにおける各種栄養素制限・強化培養が、放出exosome内の代謝産物組成に与える影響を解析し、機序となる代謝産物の候補についての示唆を得る。そして、これらの筋内での代謝、生成を高める介入手段を、各種物理療法や栄養療法を活用して探索し、そのマクロファージへの効果を確認して介入手段の開発を図る。
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