研究課題/領域番号 |
17H04750
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
進矢 正宏 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (90733452)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 姿勢制御 / 運動学習 / 予測 / モーションキャプチャー |
研究実績の概要 |
研究代表者の異動により予定していた計測環境が利用できなくなったため、2017年度の上半期は、モーションキャプチャ―・フォースプレート・表面筋電図を含む全身動作を計測するための研究環境の準備を行った。下半期には、姿勢制御の学習機構を研究するための、角運動量保存則を利用したジャイロ式の外乱装置の開発を行った。ジャイロ式外乱装置は、回転するプレート部分を持つ錘のようなもので、通常の錘とは異なり質量負荷の他に角運動量を有する。腕を下した状態で外乱装置を持った状態から腕を挙上する際に、プレートの回転軸が変化していくと、角運動量保存則により角加速度が生じ、日常生活では体験することのない外乱が与えられる。 開発したジャイロ式外乱装置によって与えられる新規な外乱に対する予測的姿勢制御(APA)の学習過程を研究に着手した。フォースプレートにより床反力を、モーションキャプチャにより腕拳上動作および全身の動作を、筋電図により腕挙上および姿勢制御に関わる全身の筋活動を計測した。錘が回転していない条件(通常の錘挙上課題)で12試行、続いて、錘を回転させた条件(新規な外乱課題)で48試行、最後に再び錘が回転していない条件で12試行の測定を行った。結果、新規な外乱に対して、新たな予測的な姿勢制御が学習されるということが、床反力および筋電図のデータから明らかとなったが、現在までのところ、状態空間モデルを用いて定量的に記述するまでには至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題を申請した当初は、所属先大学の共用の設備を用いて動作計測を行うことを見込んでいたが、研究代表者の異動により予定していた計測環境が利用できなくなった。そのため、当初の研究計画を変更し、動作計測環境の準備に研究予算と研究期間を充てる必要があった。それを踏まえた上で、2017年度には、モーションキャプチャ―・フォースプレート・表面筋電図を含む動作計測環境を整備し、安価なプロトタイプではあるものの、姿勢制御の学習機構を研究するためジャイロ式の外乱装置の試作と、その外乱装置を用いた実験を行うことができたため、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
試作した外乱装置を用いて、引き続き予測的姿勢制御の学習過程の研究を行う。2017年度のデータからは状態空間モデルを用いた解析を行うことができなかったが、この原因として、腕の軌跡や動作の速度などの統制が不十分であった、顕著な姿勢制御が見られるほどの外乱が与えられなかった、モーターの回転音によって意図しないコンテキストを与えてしまっていた、等の原因が考えられる。2018年度は、これらの可能性を踏まえて、より厳密な実験統制を行いつつ実験を行う予定である。試作した装置では実験を行う上で求められるだけの外乱の統制が不可能だと判断した場合は、研究協力者から、ロボットアーム式の外乱装置を借りることも考えている。また、昨年度の研究の過程で関連した研究テーマとして、求められるステップの正確性が異なる際にステップ前の予測的姿勢制御活動にどのような変調が見られるか、という着想を得たため、これも並行して研究を行う予定である。
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