研究課題/領域番号 |
17H04750
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
進矢 正宏 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (90733452)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 運動学習 / 姿勢制御 / ばらつき / 予測的姿勢制御 / モーションキャプチャ― |
研究実績の概要 |
様々なスポーツにおいて、ステップ動作には素早さだけではなく正確性が要求される。また高齢者の転倒の主な原因の一つに、踏み誤りがあることからも、ステップ動作において足を正確に制御することの重要性が伺える。しかしながら、ステップの大きさや方向に関する制御方略と比較して、ステップに異なるレベルの正確性が求められる際の制御方略に関する知見は限られている。以上を踏まえ、2019年度は、前年度に引き続き、正確なステップ動作が要求される際の予測的姿勢制御(Anticipatory postural adjustment: APA)に関する研究を行った。被験者の前方床面に、前後方向の幅が2, 4, 6, 8 cmの梯子状のターゲットを設置し、ターゲットの上にステップしそのまま静止する課題を行った。この課題においては、被験者は、ターゲットの幅に応じて、足のステップ位置だけではなく、動的な重心状態を狭い領域内に留めることが要求されている。ターゲットの幅が狭い条件では、長いステップ時間をとるために、ステップ開始前の段階での前方への重心速度を遅くし、重心位置を支持脚側へ移動させていた。また、ターゲットの幅が狭い条件では、APAの際の足圧中心変位のパラメータやAPA終了時点での重心の位置や速度のばらつきが小さくなることが明らかとなった。これらの結果は、正確なステップが要求される際は、遅いステップ動作のための準備を行うとともに、APA制御そのものの正確性も向上させるという制御が行われることが明らかとなった。今後、前年度の成果と合わせて、国際誌での論文発表を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定通り、正確なステップを行う際の予測的姿勢制御に関する研究を行うことができた。2019年度末には、この成果を姿勢と歩行研究会にて発表する予定であったが、新型コロナウイルスによる影響のため、研究会が開催されなかったため、研究費の次年度への繰り越しを行った。また、正確なステップ動作のためには正確な姿勢制御が必要、という2019年度の成果を元に、2020年度は、姿勢制御トレーニングがステップ動作の正確性を改善するか、という仮説を明らかにするためのトレーニング実験を行うことを計画していたが、2020年度は4月から新型コロナウイルスの影響により、実験スケジュールの計画が困難であることが予想されるため、定期的な計測を必要としない実験を新たに考える必要に迫られている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初、2020年度は、姿勢制御トレーニングがステップ動作の正確性を改善するか、という仮説を明らかにするためのトレーニング実験を行うことを計画していた。トレーニング実験では、事前計測・介入・事後計測までを、計画通りのスケジュールで遂行することが必要とされるため、新型コロナウイルスによる実験への制限がいつどのような形で行われるかが読めない状況下では、トレーニング実験を行うことは困難であると考えられる。そこで、2020年度は、トレーニング実験を諦め、多様な外部環境に合わせてどのような姿勢制御が行われるのかに関して、ステップ前の予測的姿勢制御に加えて、代表的な適応的移動運動である歩行中の障害物跨ぎ動作をモデル動作とした研究を行うこととする。
|