研究課題
肉離れの受傷しやすさには個人差が存在し、そこには遺伝要因が関与している。本研究は、肉離れ受傷リスクの個人差を生み出す遺伝要因(遺伝子多型)を明らかにし、その遺伝子多型がどのようなメカニズムで肉離れ受傷リスクに影響を及ぼしているかを解明することで、肉離れ受傷の分子メカニズムを基盤とした新たな肉離れ予防策の構築へとつながる情報を得ることを目指す。平成30年度は、肉離れ受傷リスクの個人差を生み出す遺伝子多型を明らかにするため、全ゲノム関連解析を実施した。200名の肉離れ受傷経験があるアスリート(症例群)と560名の肉離れ受傷経験が無いアスリート(対照群)を対象とし、ジャポニカアレイにより解析した約66万多型のジェノタイプデータを元にインピュテーションを実施した。クオリティーコントロール後、解析対象となった539万多型について肉離れ受傷との関連解析を行った結果、男性アスリートにおいて、P<0.00001の有意水準で肉離れ受傷との関連性が認められた遺伝子多型は53種であった。これらの53多型の存在場所は、2番染色体、16番染色体、22番染色体中の3領域に集積していた。これら3領域において関連性が上位の多型に関し、他のアスリート集団(n=700)において再現性の確認を実施した。また、これらの多型とヒト生体における骨格筋特性の関連性について検討を行った。その結果、一部の多型に関し、肉離れ受傷経験者で頻度が高いジェノタイプを有する群において、骨格筋のスティフネスが高いことが明らかとなった。
3: やや遅れている
新たなインピュテーション手法を採用し再解析を実施したため、研究期間を延長し本研究を実施することとなった。
今後は、全ゲノム関連解析により明らかとなった肉離れ受傷経験と遺伝子多型の関連性のメカニズムを解明するため、同定された遺伝子多型が遺伝子の機能にどのような影響を及ぼしているかを検討する。
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