研究課題
本研究の目的は、実験動物の身体活動に着目し、身体活動量の多寡がどのように決定されているのか、さらに身体活動量の増加(あるいは減少)が脳にどのような適応(あるいは不適応)をひき起こすか明らかにすることであった。本年度は、以下の成果を得た。1.我々はこれまで、マウスを豊かな環境下で飼育しても身体活動量は増加せず一定に保たれること、さらにこの身体活動量の恒常性を保つためには社会的交流(集団飼育)が必須であることを明らかにした。そこで、環境変化に対する身体活動量の応答が社会的交流の有無で異なるのか、「飼育環境の狭小化」というアプローチから検証した。その結果、マウスの飼育環境を狭小化すると身体活動量は減少するが、その減少量は単独飼育と比較して集団飼育で抑制された。この結果は、これまでの「豊かな環境」介入において得られた知見を支持するものであった。2.活動量が顕著に低下する脳疾患モデルの作成を目指し、中大脳動脈結紮による脳梗塞モデル、あるいは薬物投与による脳出血モデルを用いた条件検討を重ねたが、残念ながら再現性高く脳疾患モデルを作成することができなかった。現在、6OHDA投与によるパーキンソン病モデルの作成を試みており、引き続き、脳疾患によって引き起こされる身体活動量の減少、およびそれに伴う脳機能低下を予防するための方略について検討していく。3.「マウスの身体活動量はあるセットポイントで恒常的に調節されており、そのセットポイントは幼少期の経験により決定されている」という仮説を立て、検証した。その結果、たとえマウスを幼少期から豊かな環境で飼育しても、成熟マウスの身体活動量は通常ケージで飼育されたマウスと同程度であった。この結果は、マウスの身体活動量のセットポイントは先天的に決定されていることを示唆している。今後、身体活動のセットポイントを規定する神経機序について検討していく。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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