本研究の目的は、どのような心理学的要因が、退職に伴う高齢夫婦の生活習慣・健康状態の変化に影響を及ぼしているのかを明らかにすることである。本研究は、高齢期の退職の健康影響の解明という学術的課題を大きく進めるものであり、本研究の知見から、退職という転機を高齢者夫婦の健康増進の好機とするための方策を示唆できる。 2020年度の主要な実施事項として、神戸市灘区において実施した縦断研究の3年後追跡調査と、介入研究(ランダム化比較試験)の半年後追跡調査をそれぞれ実施した。縦断研究の3年後追跡調査については、2017年度に神戸市灘区で行った事前調査の回答者1784名のうち、今後の連絡への了承が得られており、かつ、2018年度に行った1年後追跡調査で宛先が有効であった1072名(うち夫婦263組)へ郵送で協力依頼を行った。3年後調査の調査項目は、事前調査および1年後追跡調査と同様に、健康状態、生活習慣、生活習慣や健康状態に影響する可能性のある心理学的要因、基本属性などであった。依頼した者のうち、854名(79.7%)から3年後追跡調査への回答が得られた。うち、190組(380名)は、夫婦そろって、事前調査および3年後調査への回答が得られた。 介入研究の半年後追跡調査は、2019年度に神戸市灘区内における募集に応じて介入に参加し、かつ、事後調査への協力が得られた130名(うち夫婦29組)へ郵送で協力依頼を行った。半年後追跡調査の内容は、2019年度に行った事前・中間・事後調査と同様に、質問紙(健康状態、生活習慣、生活習慣や健康状態に影響する可能性のある心理学的要因、基本属性などの質問項目で構成)と活動量計(3軸加速度計)による調査とした。健康状態の悪化により調査辞退の申し出のあった1名を除く、129名(うち夫婦29組)から半年後追跡調査への回答が得られた。
|