研究実績の概要 |
心不全患者での運動耐容能の低下は独立した強力な予後規定因子であり(Circulation 1991)、我々はその主要因が骨格筋ミトコンドリア障害であることをあきらかにしてきた(Kinugawa S, Takada S. Int Heart J 2015; Takada S. Cardiovasc Res 2016)。しかしながら、ミトコンドリア機能の障害部位や制御機構は不明なままであった。 ミトコンドリア複合体II(complex II)は、電子伝達系の一部であり、酸化的リン酸化によりATPを産生するが、ミトコンドリアDNA(mtDNA)にコードされていないこと、内膜のプロトン(H+)の濃度勾配に関与しないこと、超複合体に含まれていないことから重要視されてこなかったため、研究が全く進展していない。 本研究の目的は、心不全に起因するcomplex IIの会合不全における形態・機能的制御の破綻が、ミトコンドリア呼吸能低下を介して骨格筋異常の発症・進展に関与するという仮説を検証し、その新規治療法を開発・確立するものである。 ミトコンドリアのSDHA, B, C, Dのタンパク発現および活性、complex I由来の呼吸能にも群間に差がないにもかかわらず、complex I+IIおよびcomplex II由来のミトコンドリア呼吸能はsham(偽手術)群に比較し、心筋梗塞(MI)群で有意に低下することをあきらかにした。したがって、心不全モデルマウスの骨格筋complex II由来ミトコンドリア呼吸能の障害はミトコンドリア複合体会合因子の異常である可能性が考えられる。
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