研究課題/領域番号 |
17H04761
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
千葉 満 弘前大学, 保健学研究科, 講師 (20583735)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 放射線被ばく / 血清中miRNA / バイオマーカー / 子ども期 |
研究実績の概要 |
平成29年度は子ども期のマウスと大人期のマウスにおける被ばくによる生体影響と体液中で増加するRNAの探索を行った。本研究は弘前大学動物実験委員会の承認を得て行われた。得られた成果を以下に示す。 ① 3週齢(子ども期)と8週齢(大人期)のC57BL/6NJcl雄マウスX線照射(管電圧150 kVp、管電流20 mA、線量率1.0 Gy/min、遮蔽板:Al 0.5 mm + Cu 0.3 mm)を行った。X線0.5Gy、1.0Gy照射後の血球成分の被ばく影響を調べるため、赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、MCV、MCH、MCHC、白血球数、血小板数を調べたところ、0.5Gy、1.0Gyともに8週齢では曝露3時間後以降で有意な白血球減少が認められたが、3週齢では有意差が認められなかった。ほかの血算値は被ばくによる変化はほとんどなかった。本解析により白血球の放射線感受性は3週齢より8週齢の方が高いことが明らかとなった。 ② X線0.5Gy、1.0Gy照射後の白血球分画の変化を調べるため、血液塗抹標本を作製しメイグリュンワルド・ギムザ染色を用いてそれぞれの白血球数の算定を行った。3週齢、8週齢ともに0.5Gy、1.0Gy照射後3時間の時点では白血分画に変化はみられなかった。8週齢では0.5Gy、1.0Gy照射後6時間でリンパ球分画の減少が認められたのに対し、3週齢では0.5Gy照射においてリンパ球分画の減少は認められなかった。本解析により大人期に比べて子ども期の0.5Gy照射6時間後における放射線への影響は乏しく、子どものリンパ球は大人に比べて放射線感受性が低いことを示唆している。 ③ 有意なリンパ球減少がみられないX線照射3時間後におけるその他の放射線被ばくバイオマーカー候補を調べるために、血清中miRNAの発現変動をマイクロアレイ解析によって行った。その結果、0.5Gyあるいは1.0Gy照射によって2倍以上血清中で発現上昇するmiRNAは8週齢では8個、3週齢では272個検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
○子ども期のマウスにおける放射線被ばく影響評価(達成度100%) 子ども期の被ばくによる生体影響を大人と比較して調べたところ、子どもの方が放射線被ばくへの感受性が低いことを示唆する結果を得た。このことはベルゴニー・トリボンドーの法則に合致しない重要な発券であった。 ○血中で増加するmiRNAの網羅的スクリーニング(達成度100%) 被ばく3時間後における子どもの血算解析ではほとんど有意差は認められなかったが、大人に比べて子どもの血清中miRNAの著しい変化が認められた。このことは子どもの被ばく影響評価に血清中miRNA解析が適している可能性を示唆するものである。 本解析によって得られた成果は現在原著論文として報告する準備をしている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は平成29年度の課題を引き続き遂行するとともに、以下の課題を検討する。 ① 網羅的スクリーニングによって得られた血清中miRNAの発現バリデーションを行う。 ② 血清中miRNAが細胞外小胞内に存在するか明らかにする。また血清中において細胞外小胞の増加が認められるか調べる。 ③ 被ばくによって増加する血清中miRNAの由来臓器・細胞の特定を検討する。 ④ 次世代シークエンス解析によってmiRNA以外の血清中non-coding RNAを調べる。 ⑤ 侵襲性のない尿中miRNAバイオマーカーの探索を検討する。
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