2020年度は前年度に引き続き、高線量放射線被ばくによる血清中miR-375-3pの発現バリデーションと由来臓器の確認実験を実施した。 大人期(8週齢)のマウスC57BL/6NJcl雄に高線量X線を照射しmiRNAマイクロアレイ解析を行ったところ、血清中で増加するmiRNAを21種類同定した。これらのmiRNAのうちmiR-375-3pに着目して、大人期(8週齢)と子ども期(3週齢)のマウスC57BL/6NJcl雄に高線量X線を照射し、miR-375-3p発現を調べ、その結果以下のような結果を得た。①子ども期(3週齢)のマウスにおいても高線量X線曝露によって血清中miR-375-3pの増加が確認された。②子ども期(3週齢)においても血清中miR-375-3pはエクソソームのような細胞外小胞に内包していることが確認できた。③miR-375-3pの最も高発現する臓器は現在リアルタイムPCRにて調査中であり、由来臓器の特定の解析を進めている。調べた臓器のうち大人期(8週齢)と同様に膵臓や小腸にも発現が確認できたため、それらの臓器からの由来と考えられた。現在得られた全ての研究成果を公開するために、論文執筆中である。また、一部のデータは学会にて発表を行った。 新たな課題として大人期(8週齢)と子ども期(3週齢)のマウスにおいて血清中RNA量が著しく異なり、子ども期(3週齢)の血清中には非常に豊富なRNAが存在することが明らかとなった。今後、大人期(8週齢)と子ども期(3週齢)においてなぜ血清中RNA量が異なるのか?血清中RNA量と放射線感受性との関連があるのか?これらの疑問を明らかにしていく予定である。
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