研究課題/領域番号 |
17H04762
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
後藤 佑樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70570604)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 翻訳合成 / ポリケチド / ペプチド / 擬天然物 / 生合成 |
研究実績の概要 |
本研究では、優秀な天然物の局所骨格を拝借しつつ、全体の分子骨格を人工的に創製することで、より多彩な活性を発揮する人工分子『擬天然物』を開発できないかと着想した。具体的には、強い生物活性を誇る天然物の一種として知られている、ポリケチド-ペプチド複合分子(PKPH)を擬天然物のモチーフとして着目した。本研究では、ポリケチド様の炭素主鎖骨格を翻訳反応を用いて構築する新手法を確立する。これにより、大規模な人工PKPH化合物ライブラリーを一挙に合成し、任意の生物活性を示す人工PKPH化合物を探索するシステムの樹立を最終目標として掲げる。昨年度までの研究で、翻訳反応中に炭素-炭素結合を形成することでPKPH化合物を翻訳合成するために必要な人工翻訳基質を設計及び合成、及び翻訳反応後に化学的に主鎖骨格の組換えを行う戦略に必要となるα-ヒドロキシ酸基質についても、設計・合成を完了し、さらにモデルペプチドへの翻訳導入についても実証している。 当該年度においては、 人工翻訳基質を用いて、10種を超える人工翻訳基質を用いて炭素-炭素結合の翻訳形成の反応条件を種々検討した結果、1.これらの人工翻訳基質が、翻訳伸長因子には良好に認識されることでリボソームのAサイトに運搬されること、2.一方ペプチジル転位中心による炭素-炭素結合には至らないことを確認した。この知見は我々の知る限り、翻訳反応における炭素-炭素結合形成の試みにおける唯一の知見であり、極めて興味深い発見であると自負している。 また、α-ヒドロキシ酸基質(昨年度にを設計・合成・モデルペプチドへの翻訳導入を完了)を含むペプチド上での主鎖骨格組換え反応の条件検討を行った結果、主鎖組換え反応に適した反応条件を見出した。これにより、複数のPKPHモデル化合物の合成にも成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画から、より挑戦的な目標設定であったリボソームによる炭素-炭素結合形成戦略について、興味深い新たな知見を得ることに成功した。一方、より確実性の高い戦略として計画していた翻訳反応後の化学的骨格変換によるポリケチド様骨格の構築について、順調に研究を進捗し、モデルPKPHモデル化合物の合成に成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに蓄積した主鎖骨格組換え反応によるポリケチド様骨格の翻訳合成技術を活用することで、生物活性を示すPKPH化合物の合成を目指す。さらに、人工PKPH化合物ライブラリーの構築と探索を行い、PKPH擬天然物の創製も目指す。人工の生物活性PKPH化合物の探索するシステムの樹立にも着手する。
|