研究実績の概要 |
小分子蛍光プローブは蛍光イメージングを通じて細胞内外の多様な分子の時空間動態を可視化し、動的な細胞現象の直接的な理解に大きく貢献してきた。しかしながら、その応用は培養細胞で多く達成されてきたが、組織や個体での分子動態の解明への貢献は十分に為されていない。本研究では、神経細胞のカルシウムシグナルの可視化を対象として、従来生体応用の際に問題となるプローブの非特異的染色を解消し、なおかつ、生体イメージングに適した近赤外光による分子の可視化を実現する革新的な蛍光プローブ・ケミカルタグ技術の開発を目的とする。当該年度は、幅広い範囲でのカルシウムイオン濃度変化を計測できるように、これまでに初代培養神経細胞でカルシウムシグナルの検出が可能であることを示した近赤外蛍光プローブの誘導体を開発し、提案技術の拡張を図った。また、蛍光プローブ・ケミカルタグ技術のin vivo近赤外蛍光イメージングへの応用を図った。マウスにアデノ随伴ウイルスを用いて遺伝子導入を行い、神経細胞にケミカルタグタンパク質を発現させた。KonnerthらのMCBL法(PNAS 100, 7319, 2003)を参考にして、非イオン性ブロック共重合体等を利用した蛍光プローブ製剤を調製し、バルクローディング法により微小ニードルを介して頭部手術を施したケミカルタグ発現マウスの大脳実質内に投与した。その後、クラニアルウィンドウを作製し、麻酔下のマウスを共焦点顕微鏡によるin vivo蛍光イメージングに供与したところ、蛍光プローブによる神経細胞の染色が観察された。しかしながら、脳スライス標本の観察から、ケミカルタグ発現のマーカーとして利用したGFPが陽性である細胞だけでなく陰性の細胞でも染色が見られることを明らかとなった。今回得られた結果から、蛍光プローブのローディング法等の改良が必要であることが示唆された。
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