研究課題
本研究は、異なる受容体を介したドーパミン神経伝達の機能的意義を明らかにすることを目的とした。ショウジョウバエ脳に着目し、ハエの持つ全4種のドーパミン受容体の発現解析を網羅的に行い、その構成原理の理解に向け、2019年度は以下の項目を実施した。1.前年度までに従事していた微小な細胞を高精度・高効率に検出する解析ソフトウェアパイプラインを構築した。これにより、各受容体遺伝子の脳内発現細胞数を網羅的に解析し、受容体タイプによって脳内の発現の豊富さが異なることを明らかにした。特にキノコ体では全ての受容体種が共局在するが、それ以外の脳構造では発現受容体種が異なることが示唆された。2.1で得られた仮説をさらに精査するため、異なる脳サンプルの神経投射パターンを標準脳座標系において網羅的かつ脳構造レベルで一元的に解析する系を確立した。これをすべての受容体遺伝子に適用し、各神経投射パターンを同一軸上で統合した。得られたデータを多次元解析し、発現するドーパミン受容体遺伝子のパターンによって規定される脳の高次構造を明らかにすることに成功した。3.ドーパミン受容体をGFPによって直接標識し、受容体分子の細胞下レベルの発現解析を実施した。その結果、DopEcRと呼ばれる受容体が軸索起始部に局在することを見出した。またDopR1とD2Rと呼ばれる受容体は、細胞全体に渡って発現すること、DopR2はプレシナプス部への局在性が強いことが分かり、これまで不明であった細胞下レベルのドーパミン受容体分布と機能差異の理解に先鞭をつけることができた。以上を通じ、ドーパミン機能の多様性を支える細胞レベル、細胞下レベルの受容体発現構成への理解が深まった。上記の内容は、Cell Reports誌において、共同第一著者論文として発表された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cell Reports
巻: 30 ページ: 284-297
https://doi.org/10.1016/j.celrep.2019.12.018
Journal of Neurogenetics
巻: 33 ページ: 143-151
https://doi.org/10.1080/01677063.2019.1593978
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2020/02/press20200213-05-brain.html