• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実績報告書

過剰な攻撃行動と免疫系をつなぐ神経メカニズムの解析

研究課題

研究課題/領域番号 17H04766
研究機関筑波大学

研究代表者

高橋 阿貴  筑波大学, 人間系, 准教授 (30581764)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード攻撃性 / 個体差 / サイトカイン / 背側縫線核 / 雄マウス
研究実績の概要

ヒト研究から、攻撃性と血中の炎症系サイトカインとの相関が報告されている。しかしながら、免疫系がどのように神経系の働きに作用することで攻撃行動に影響を与えるかのメカニズムはほとんど分かっておらず、それどころか過剰な攻撃行動に関わる神経回路自体も探索段階である。本研究は、雄マウスを用い、背側縫線核(DRN)を含む神経回路がどのように免疫系によって影響を受け、その結果攻撃行動の個体差を生み出したり、過剰な攻撃行動を引き起こすのかを明らかにすることを目指すものである。
本実験から、攻撃行動とDRN内のインターロイキン1β(IL-1β)量の間に負の相関があることが明らかとなった。実際に、薬理学的にDRNにおけるIL-1βの作用を抑制することにより攻撃行動が増加し、またIL-1β受容体の発現をノックダウンすることでも攻撃行動が増加した。また、攻撃性の高い個体ほどDRNセロトニンニューロンの活性が高く、IL-1β受容体ノックダウンによってDRNセロトニンニューロンの活性は更に増加した。In vivoマイクロダイアリシスにより経時的なIL-1β放出変化を調べたところ、攻撃性の異なる個体の間で違いがあることが明らかになってきた。引き続き、DRNからのどのような神経投射が雄マウスの攻撃行動に関与するかについて、光遺伝学的手法やニューロントレーサーなどを用いて解析を行っている。また、セロトニンニューロンの神経活動がどのように攻撃行動に関与するかについて、フォトメトリーを用いた解析を始めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

コンディショナルノックダウン実験の条件検討を開始する段階で、共同研究者から予定したウイルスの作製に困難が生じている旨の連絡を受けた。研究遂行上、細胞種の同定が不可欠なため、急きょ実験計画を変更し、違う種類のウイルスを用いて代替実験を行うこととしたが、異なる細胞種を染色解析するために、遅延が生じた。そのほかは、DRN特異的なIL-1β受容体遺伝子ノックダウンによる、攻撃行動の変化と、セロトニンニューロンの活性変化が明らかとなり、また、攻撃行動中のDRN内のIL-1β放出の解析から、攻撃性の個体差によってその応答が異なることも明らかとなった。

今後の研究の推進方策

1)これまでの解析から、DRNにおけるIL-1R1ノックダウンによって5-HTニューロンのc-Fos活性が変化することが明らかとなったことから、本年度はDRNのセロトニンニューロンが攻撃行動にどのように関与するかを、オプトジェネティクスとファイバーフォトメトリー法を用いて検討する。
2)DRNからVTAへと投射するニューロンの攻撃行動中の神経活動変化を、c-Fosとフォトメトリーを用いて解析する。
3)VTAへと投射するDRNニューロンにおける遺伝子発現の違いを、TRAP法を用いて検討する。
4)IL-1βもしくはIL-1R1を欠損させたマウスの攻撃行動の解析を引き続き行う。
5)攻撃性が大きく異なる野生由来マウス系統において、攻撃場面における血中と脳内サイトカイン量の解析を引き続き行う。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Orexin signaling in GABAergic lateral habenula neurons modulates aggressive behavior in male mice2020

    • 著者名/発表者名
      Flanigan ME, Aleyasin H, Li L, Burnett CJ, Chan KL, LeClair KB, Lucas EK, Matikainen-Ankney B, Cuttoli RD, Takahashi A, Menard C, Pfau ML, Golden SA, Bouchard S, Calipari ES, Nestler EJ, DiLeone RJ, Yamanaka A, Huntley GW, Clem RL, Russo SJ
    • 雑誌名

      Nature Neuroscience

      巻: - ページ: -

    • DOI

      https://doi.org/10.1038/s41593-020-0617-7

    • 査読あり
  • [学会発表] Glutamatergic input into the dorsal raphe nucleus and aggressive arousal.2020

    • 著者名/発表者名
      Takahashi A
    • 学会等名
      第97回日本生理学会大会
  • [学会発表] 雄マウスの攻撃行動を過剰にするメカニズムとしての背側縫線核の興奮性入力2019

    • 著者名/発表者名
      高橋阿貴
    • 学会等名
      第31回日本行動内分泌研究会
  • [学会発表] Interplay between immune system and aggressive behavior.2019

    • 著者名/発表者名
      Takahashi A
    • 学会等名
      The 42nd Annual Meeting of the Japan Neuroscience Society (Neuro2019)
  • [学会発表] Individual differences in aggression mediated by temporal changes in cytokine signaling in the dorsal raphe nucleus2019

    • 著者名/発表者名
      Takahashi A, Aleyasin H, Stavarache MA, Flanigan ME, Brancato A, Menard C, Pfau ML, Kana V, Wang J, Hodes GE, Ogawa S, McEwen BS and Russo SJ
    • 学会等名
      SfN2019
    • 国際学会
  • [学会発表] Differences of aggressive behavior of ICR mouse strain between breeders and peripheral immune cell profile.2019

    • 著者名/発表者名
      Takahashi A, Mimura N, Ogawa S
    • 学会等名
      第79回日本動物心理学会大会
  • [備考] 高橋阿貴 Research

    • URL

      https://sites.google.com/view/akitakahashi-tsukuba/home

  • [備考] 筑波大学研究者総覧TRIOS 高橋阿貴

    • URL

      https://trios.tsukuba.ac.jp/researcher/0000003646

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi