本研究は、西洋思想における「狂気と創造性」の問題をめぐって行われた。この2つを関連付ける議論はプラトンの時代からあるが、その神的狂気の議論に始まり、次第にメランコリーが創造性と関連付けられるようになる過程が検討された後、デカルト、カント、ヘーゲルらの議論における狂気の取り扱いを、フーコーが述べた17世紀のおける「狂人の監禁」とその文学における回帰として論じた。さらに、ヘルダーリンを中心にこの問題が統合失調症(精神分裂病)という病との強い関連のもとで捉えられるようになった過程を検討した。また、20世紀の思想におけるハイデガーの「詩の否定神学」の議論に対する応答としてフランス現代思想を再解釈した。
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