研究課題
本年度は、ポストデジタル以降の音を生み出す構造の構築として、以下の研究を実施した。1. 針の振動 - 《予め吹き込まれた音響のないレコード》の大きさの拡張。研究予算の観点から、モデリングプロッタによる高精度化に代わり、ハンディCNC(Handibot)による演奏エリアの拡張を行った。これまでのところ、CNCの加工エリアを変更する際の位置合わせという課題が確認されているが、別種のCNCを用いることで、卓上にとどまらない大規模なスケールでの音生成の可能性が示唆される。2. 次年度以降に予定していた、歯車の回転 - 任意の形状を持つトーンホイールの作成、および、筋肉の収縮 - 蝉の発音筋のロボットアームによる制御 、の先行実験を行なった。その結果、歯車の回転においては、エレキギターのピックアップにより、磁性体の回転に伴う磁界の変動を電気信号の変化として検出することが出来た。また、筋肉の収縮においては、ファーブル昆虫記の記述を参考に、実際に採取した蝉の筋肉をピンセットにより刺激することで、発音を試みたものの、期待通りの音量を得ることはできなかった。この点については、死後硬直の影響を含め、今後のさらなる検証が必要となる。3. 新たな音を生み出す構造として、物理モデリング音源の再物理化、を試みた。これは従来計算機内で仮想的に構築されていた音源の構成要素を、同種の機能を持つ各種の物理的な装置により実空間に再実装する(例:スピーカとマイクによる遅延回路の構成)、というものである。4. 本研究に関連する実践・研究を行う作家・研究者との対話。5. 以上及び関連の研究成果の発表。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、一部計画を変更(高精度化>演奏エリアの拡張)して研究を実施することになったものの、当初次年度以降に予定していた、先行実験の実施に加え、同一のテーマに基づく別種の試みに着手出来た。また、当初の計画を上回る頻度での作家・研究者との対話により、ポストデジタル以降の音を生み出す構造に対する議論を深めることが出来た。以上の点を踏まえ、総合的に当該の進捗状況とした。
次年度以降は、これまでの成果を踏まえ、計画をやや早める形で研究を実施する。特に、3年目に予定していた、筋肉の収縮 - 蝉の発音筋のロボットアームによる制御、については、実験の実施時期が限られることから、各年ごとに着実に検証を進めていく。あわせて、音以外の要素にも着目し、ポストデジタル以降の表現を生み出す構造について考察を深める予定である。また、既存の音を生 み出す楽器・装置との比較については、所属機関の保有する設備を有効活用し、作業を進めていく。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (4件)
In Proceedings of the Twelfth International Conference on Tangible, Embedded, and Embodied Interaction (TEI '18). ACM, New York, NY, USA
巻: 1 ページ: 517-520
10.1145/3173225.3173300
「Re-actions 志水児王・堀尾寛太」、三菱地所アルティアム・西日本新聞社
巻: 1 ページ: 36-60
In Proceedings of the 2017 Conference on Interaction Design and Children (IDC '17). ACM, New York, NY, USA.
巻: 1 ページ: 379-384
10.1145/3078072.3079738
先端芸術音楽創作学会 会報
巻: Vol.9 No.3 ページ: 17-26
巻: Vol.9 No.3 ページ: 38-42
http://www.design.kyushu-u.ac.jp/kyushu-u/topics/detail?nid=1212
http://www.kidnext.design.kyushu-u.ac.jp/news/view/64
http://www.sal.design.kyushu-u.ac.jp/anlacourtis0309.html
http://www.design.kyushu-u.ac.jp/kyushu-u/topics/detail?nid=1352