研究実績の概要 |
研究3年目となる本年度は,初年度,次年度の研究成果を踏まえ以下の研究を実施した。その主な成果は以下の通りである.「ポストデジタル以降の音を生み出す構造の構築」として A.機械,B.電磁気,C.生物,という3つの領域を対象に, A. 《予め吹き込まれた音響のないレコード》に関わる試みとして,陶芸家との協同のもと,その素材として磁器を選び,数千年は保存できることが歴史によって担保されている音の記述を実現した.あわせて,大型レーザーカッターによる演奏エリアの拡張をおこない,卓上にとどまらない大規模なスケールでの音生成の可能性を確認した.さらに以上の成果を踏まえ,作品《皿》,《線 (可逆的な)》 を制作し,福岡県立美術館で開催された「おとない -Sound/Visit-」展(2020.1.15~1.19)に出展した。 B. 電気信号としての音の生成に関わる試みとして電磁誘導に着目し,印刷物の濃淡から磁界変動を検出することで,任意の音声波形を電磁ピックアップと磁界の変動により生成することを可能とした.この音を発する印刷物,という新たな手法に基づき,海外共同研究者と作品《Mary Had a Little Lamb》を共同制作し,その成果を学術論文として取りまとめた[Jo, DeMarinis, 2020]。 C.前年度に引き続き,イカの色素胞を用いた音声信号の可視化の試みを実施する[Yokokawa, Jo, 2019]と共に,第4の素子として知られるメモリスタを植物(アロエベラ)を用いて制作し,別途修復作業を行ったアナログ・シンセサイザー(Roland SYSTEM-700)と組み合わせることで,生物由来の音響生成モジュールとして,演奏の場で活用した[Nishida, Jo, 2020]。
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