研究課題/領域番号 |
17H04776
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上峯 篤史 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (70609536)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 旧石器時代 / 古人類 / 先史学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本列島の先行人類文化(前・中期旧石器文化)の存否と変遷、周辺大陸との系統関係の解明を目指すことにある。そして彼らの文化が、新人による後期旧石器文化の成立に果たした役割を明らかにすることをめざす。今年度は先行人類の所産である可能性が考えられている「遺跡」のうち、「人為性は明確だが、年代が不明確なものの検討」を研究テーマに掲げて、研究に取り組んだ。 島根県松江市鳥ヶ崎遺跡の発掘調査、愛知県新城市加生沢遺跡の資料熟覧等を実施した。鳥ヶ崎遺跡では、かねてから議論があった「玉髄・瑪瑙製旧石器」の年代や文化的評価問題の前進に寄与しうる新たな成果を得た。また2度にわたる発掘調査において、堆積学や地形学、火山灰編年学の手法を組み合わせた発掘調査の手順を概ね確立できた。周辺地域の調査においても、出雲地域のレス-古土壌堆積、関連する遺跡の状況が把握できた。 加生沢遺跡については、これまで個人所蔵であった資料が名古屋市立博物館に寄贈され、その収蔵状況の確認から調査を開始した。資料の熟覧を通じて、前年度までの所蔵者のもとで資料を観察して得た所見を補填することができた。また前年度までに実施した現地調査との接点を補強しうる所見を得ることができた。 これらの成果に加えて、河北省文物研究所と進めている共同研究においても、関連する遺跡の資料を熟覧する機会を得、本研究の推進に寄与しうる学術成果を得た。これらの研究については、平成30年度に共同研究協定を締結し、本格的に研究に着手する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画において予定していたとおり、新規の発掘調査を実施して研究課題に密接に関係した新資料を獲得できた。その他の研究項目についても、資料の概観作業はほぼ終了しており、次年度以降の研究計画の円滑な遂行に向けて準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
今後取り組む研究項目は、①今年度の継続研究、②研究成果の公表、③人為性は明確だが、年代が不明確なものの検討、④後期旧石器時代初頭遺跡の資料熟覧、である。 ①については、今年度発掘調査を実施した鳥ヶ崎遺跡の資料整理が中心となる。年代決定のための降下火山灰分析のほか、地形形成史との関わりのなかで年代を議論するために、地形面区分の確認を目的とした小規模な現地調査を実施予定である。その他、試料の岩種・円磨度の分類、堆積学的情報を加味した分析、出土資料の詳細観察を実施予定である。 ②については、鳥ヶ崎遺跡の発掘調査以外の調査成果を取りまとめた論文を執筆中である。今年度に導入した機器を活用した研究で、執筆は最終段階に到達しているため、速やかに論文投稿を果たしたい。 ③については、刊行された調査報告書などから、当該資料をめぐる課題は整理できているため、資料熟覧の機会をもてば確実に成果を見込める。 ④については、膨大な遺跡数があるため、その概要の把握から取り組む予定である。それらの検討と、①~③の成果をふまえ、現時点で明言できることと研究法上の課題について、平成30年6月の日本旧石器学会で講演予定である。
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