研究実績の概要 |
本研究で得られた研究成果は、主に以下の2点にまとめられる。第一の研究目的を明らかにする論文としては、Sakawa and Watanabel (2021, Asian Business and Management)を出版することができた。同論文は、公刊前の段階でも、American Accounting Associationの年次大会などを含む国際会議報告を行った。同研究で得られた実証結果としては、米国企業において有効とされてきた「独立取締役あるいは独立監査役」の登用は、報告利益の質を高める効果はないことを示すことができた。監査役等設置会社においては、銀行派遣監査役のいる企業において、報告利益の質を高める効果があることを示すことができた。したがって、日本企業におけるメインバンクからの監査役派遣が、会計利益の質を高め、会計不正などの問題を未然に防ぐために有用な役割を果たすことを示す結果となった。 第二の研究目的を明らかにする論文としては、Sakawa and Watanabel (2020, Asian Business and Management)を出版することができた。同論文についても、公刊前の段階において、American Accounting Associationの年次大会を含む国際会議報告を行い、Association of Japanese Business StudiesのFinalist of Best Paper Awardに選出された。同研究で得られた実証結果としては、メインバンク関係のある企業は、会計保守主義を需要せず、メインバンクによるモニタリング機能が会計保守主義を代替する役割を示している。したがって、本研究においても、第一の研究と同様に我が国の銀行中心型企業統治メカニズムが有効に機能していることを示唆する結果となっている。
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