研究課題/領域番号 |
17H04785
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研究機関 | 国立社会保障・人口問題研究所 |
研究代表者 |
是川 夕 国立社会保障・人口問題研究所, 国際関係部, 第2室長 (40603626)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 移民 / 留学生 / 日本語学校 / 移民第二世代 / 教育達成 |
研究実績の概要 |
昨年度は先行研究の再検討、及び国勢調査など既存の公的データの調査票情報を二次利用した先行分析を行うとともに、関係省庁、及び関連団体の協力を得て、プレ調査を行うことができた。 公的データの二次分析による日本における移民の移住過程の分析においては、移民第二世代に属する子どもの高校在学率に着目した分析を行い、日本では移民第二世代の教育達成においては「分節化された同化理論」は妥当せず、全般的な教育達成の遅れが見られるという結果が得られた。また今後、外国人の労働市場への包摂を分析する上での先行分析として、日本の労働市場における正規/非正規の賃金格差について、労組の有無による差異の視点から分析を行った。 プレ調査では厚生労働省、法務省、及び日本語学校の支援を行う団体の協力を得て全国100校の日本語学校に調査協力を依頼するとともに、留学生の就職支援を行うNPO法人のメーリングリストを使って調査票を配布した。その結果当初の予定を超える868名からの回答を得た。 その結果、日本語学校に通う留学生の約30%が来日時点で大学卒業資格を有していること、また父親の学歴を聞くと全体の55%が短大以上の学歴を有していることが明らかになった。また主な生計維持の手段としてアルバイトを挙げたものは全体の約半数にとどまり、就労のための留学という一般的言説が必ずしも妥当しない可能性が示された。 なお、調査結果については速報版としてデザインされたパンフレット(8p)を作成し、調査に協力してくださった関係団体や日本語学校へ速やかに送付できるようにするとともに、プロジェクトホームページ上での公開することで一般に向けた発信の準備も整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本調査は日本語学校を通じて、その生徒に調査への協力を依頼することから、日本語学校にいかに協力してもらえるかが重要となってくる。そのため、関係省庁や関係団体に本調査の趣旨を説明し、本調査への協力を得ることができたことが回答者数を増やす上で効果的であったと考えられる。 また、回答に当たってもオンライン上の調査票に直接回答するようにすることで、回収やデータ入力の手間を省くとともに、情報漏洩などのプライバシー面でも信頼を得ることができたと考えられる。 また公的データを二次利用した移住過程の分析においては、調査結果を解釈する上で重要な仮説の検証を行うことができた。これは今後、更に調査が進展するにつれてより重要になってくると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
第一に昨年度プレ調査の結果を分析するとともに、同調査において確保した調査対象者868名を対象に秋頃をメドに追跡調査を行う。第二に今年度の新規調査対象者(ウェーブ2)を対象とした調査を秋頃をメドに行う。第三に、JASSOが実施する「私費外国人留学生生活実態調査」の個票データを二次利用して、日本語学校以外の教育機関に在籍する留学生の移住過程に関する予備的分析を行い、これらの留学生を調査対象に加えることを検討する。第四に「国勢調査」、「就業構造基本調査」、「全国的な学力調査(全国学力・学習状況調査等)」、「人口動態統計」などの公的統計や、厚生労働省が実施した「外国人雇用対策に関する実態調査事業」など関連する調査の個票データを用いた二次分析を行うことで、日本に住む外国人の生活状況一般や、日本型人事制度に代表される日本の労働市場の構造的特性についての先行分析を並行して行い、本プロジェクトにおける調査結果の妥当性を検証する際のレファレンスとする。
実施計画(2018年度) 4-5月 プレ調査の結果分析、先行分析(~年度末)、各種データの二次利用申請、6-7月 今年度調査の企画(追跡、ウェーブ2)、対象拡大のための予備的分析、8-9月 調査準備、10月 実査、11-3月 調査結果の分析
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備考 |
調査の実施に当たっては調査対象者など専門外の人にも理解が得られるよう、名称を変えて実施している。
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