研究課題
平成29年度前半には、研究の第一段階として、システム1、システム2、システム3の三つのシステムの働きを想定する3システムモデルを構築し、その妥当性を検証するために、これまでの二重過程モデルに基づく研究の知見に対して、システム3を調整変数とするメタ分析が行われた(研究目的1に対応)。その結果、3システムモデルの想定と整合して、これまでの二重過程モデルにおいて検討されてきた自動過程と統制過程の働きは、社会的な文脈によって調整されることが示唆された。3システムモデルの想定に基づいて先行研究の知見をレビューした成果の一部は、社会心理学の専門書の一章として公表することが予定されている。メタ分析の結果を踏まえて、システム1、システム2、システム3のそれぞれの心理過程の特徴を比較検討するための実験手続きの開発が行われた。システム1とシステム3の働きを厳密に分離して測定する潜在・顕在指標を開発するために、個人的信念や社会規範との整合性が異なる刺激材料を作成し、呈示後に異なる遅延間隔を空けて反応を計測する実験パラダイムが開発された(研究目的1に対応)。平成29年度後半には、上記の研究の成果を踏まえて、3システムモデルの通文化妥当性、ならびに文化差について検討するための実験が行われた(目的2に対応)。その結果、システム1とシステム2の働きにはシステム3によって調整される過程と、システム3の調整を受けない通文化的な過程の両側面があることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度は研究初年度にあたり、年度初めにはメタ分析のための研究協力者の確保が難航したものの、研究は計画されていた通り、おおむね順調に進展している。
平成30年度には、3システムモデルから導かれる仮説を検証するための実証研究を進めることや、平成29年度の研究成果の公表を進めることが計画されてる。実験実施のための準備は平成29年度から開始しており、順調な進展が見込まれる。
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