研究課題
本研究課題では,ベイズ統計モデリングを柱とする統計的アプローチによって各種二次データの再分析を行う。心理学研究の再現性をモデルの積極的役割を通じて高め,その理論化に貢献することを目指している。今年度は,査読付き論文としては3報の成果を挙げた。第一に,項目反応と反応時間を共に含む,外向性を測定したデータについて,心的過程と回答行動についての理論を表現した認知モデリングを提案し,これによる再分析を行った。統計的モデル比較結果に基づけば,節約的な各種下位モデルよりも提案モデルはデータの特徴をよく表現できていると考えられた。この成果はBunji & Okada (2019)として出版された。第二に,パーソナリティ測定データに対して項目を適応的に提示する項目反応理論の拡張に基づく方法を提案し,これによって推定精度が向上することを検証するために同じ外向性データの再分析を行った。結果として,たしかに提案する方法により,反応時間と項目反応を共に含むデータでの推定精度が向上することが示された。本研究成果は藤田・岡田(2019)として出版された。第三に,OECD生徒の学習到達度調査2015年版(PISA2015)の公開データの再分析によって,探究型教授法の到達度に与える因果効果を定量化する研究を行った。結果として,ある程度までの探究型教授法は到達度に正の効果を与えるが,過度になると逆効果に転じてしまうという,2006年版データでの先行研究結果が本研究でも再現された。また,心理学評論誌のゲストエディターの1人として,心理学研究の再現性の問題をめぐる多数の論文を集めた特集号を編み,三浦・岡田・清水(2018)の巻頭言と,ベイズファクターを論じた岡田(2018)を執筆した。このほか,4つの学会でベイズ統計モデリングや再現性の問題についての招待講演を行うと共に,国内外の学会で最新の研究成果を発表した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は成果として3報の査読付き論文を発表し,本研究課題に深く関連する国内総説誌の特集号総説の発刊にゲストエディターとして関わり,また4つの学会での招待講演をはじめとして学会や研究会等での発表も通じて研究成果を発信していくことができた。新たな研究も複数進行しており,研究課題を順調に進めることができていると考えている。
研究の再現性は,心理学を超えたさまざまな分野において,引き続き国内外で注目を集めている。引き続き,論文やプレプリント,学会,研究会等をはじめとする各種情報源,また多くの研究者たちとの交流や議論を通して最新の情報を手に入れ,それを本研究課題にも活かしながら,当初の研究目的が達成できるよう研究を推進していく。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 8件、 招待講演 4件) 図書 (2件)
日本テスト学会誌
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Japanese Journal of Statistics and Data Science
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心理学評論
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巻: 61 ページ: 1-2
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