本研究は、若手研究(A)『感情障害への認知行動療法の統一プロトコルの有効性とその治療機序・神経基盤(25705018)』で実施してきた大規模なランダム化比較試験の附属研究を拡張させた研究である。最も重要な目的は、うつ病と不安症に対する診断横断的な認知行動療法の統一プロトコル(Unified Protocol for Transdiagnostic Treatment for Emotional Disorder)の有効性を検証することである。他に、UPの治療機序、神経基盤、長期効果の検討を目的としている。本体の臨床試験は、平成30年度までに目標症例数104例の登録を達成した。目標症例数の登録達成以降は、神経基盤の解明に資するデータ取得のために、ランダム割付を行わないかたちで撮像とUP実施を進めた(累計で18例登録済)。これまでのMRI撮像累計は207件となり、本年度は特にベースラインの脳画像データのクリーニングを進めた。新型コロナウイルス感染症の感染拡大に対応するために、遠隔での認知行動療法の実施手法について入念に調査し、オンラインでのセッション実施を可能とする研究計画の変更を行い、倫理委員会の承認を得た。Association for Behavioral and Cognitive Therapiesのシンポジウムでは、我が国における臨床試験の二次解析(感情調整、治療への期待、宿題遵守などが症状の改善につながる治療メカニズムの検証)の結果を公表した。プライマリアウトカム論文は改稿を繰り返し、投稿直前の状態まで進めた。さらに、感情表出と治療アウトカムの関連に関しては、予備試験のデータを用いて二次解析を行い、国際誌にて公表した。これらの研究成果を踏まえて、統一プロトコルの普及均てん化を見据えた様々な訓練及び治療マテリアルの開発と検証を続けた。
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