学習内容を長期的に保持すること、必要に応じてこれを強化することは、学習全般に普遍的に求められる重要な機能である。一見相反するこれらの機能を、脳はどう実現しているだろうか? 本研究は、視覚における見分けの学習(知覚学習)を題材にこの問題に取り組む。特に「脳視覚野における興奮性・抑制性神経修飾物質のバランス変化が知覚学習の保持・強化を制御する」という仮説を実験的に検証する。昨年度は、第一の目的である「磁気共鳴分光法と視覚課題訓練の組み合わせによる知覚学習の保持・強化に伴う視覚野の興奮・抑制バランス変化検討」を行い、その成果をNature Human Behavior誌に論文として出版した。
今年度は、第二の目標である「ニューロフィードバックと磁気共鳴分光法と組み合わた興奮・抑制バランス操作法の開発と知覚学習の保持・強化における興奮・抑制バランスの因果的役割の実証」に取り組んだ。徹底した予備実験によるデータの測定と解析により、磁気共鳴分光法ニューロフィードバックは非常に高度な技術を要し、所属研究所の有する核磁気共鳴画像法(MRI)装置をもとにした技術開発が必要であるという結論を得た。この開発を行うため、最終年度前年度応募を利用し、本研究課題を発展させる形で基盤研究Aに応募した。また、予備実験によるデータ測定と解析並びに関連研究の成果を元にニューロフィードバックと脳情報解読(デコーディング)技術に関する論文をNeuroImage誌に2報発表した。
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