研究課題/領域番号 |
17H04794
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
田原 一邦 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (40432463)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 表面・界面物性 / ナノ材料 / 自己組織化 / 電気化学 / 走査プローブ顕微鏡(STM, AFM) / グラフェン / グラファイト |
研究実績の概要 |
本課題では、グラフェン表面で有機分子が形成する自己集合単分子膜をテンプレートとし、申請者らが確立した条件で電気化学法でグラフェン表面を化学修飾し、従来困難であったグラフェンへ任意の周期(位置)で有機基を導入し得る化学修飾技術を確立することを目的とする。作成される数nmの周期で精密修飾されたグラフェン半導体の構造と電子状態を明らかにし、それに基づいて高速動作FETや超高感度センサの開発や分子エレクトロニクス素子への展開を目指す。 アルカンがグラファイトやグラフェンの表面に形成するラメラ型の自己集合単分子膜をテンプレートとして、炭素表面(動作電極)/有機溶媒(アルカンの溶液)/電解質水溶液の二溶媒界面系において、アリールジアゾニウム塩の一電子還元により発生させたアリールラジカルの付加反応を実施することで、一次元周期的なグラファイトやグラフェンの化学修飾 に成功した。また、アルカンの長さを変更し、C30~C60の炭素数を持つアルカンのラメラ構造がテンプレートとなることがわかった。また、アルカンの途中に分子間で水素結合を形成する官能基である、カルバメートや尿素部位を導入したアルカン誘導体の単分子膜をテンプレートとして、同様の検討を行った。その結果、テンプレートのドメインサイズが小さいことで、テンプレート効果が限定的であったことがわかった。これらの知見にもとづいて、より良いテンプレート分子を探索する。 アルコキシ基(偶数の炭素数:C4~C10)が置換したデヒドロベンゾ[12]アヌレン(DBA)誘導体が有機溶媒とグラファイトやグラフェンとの界面で形成するハニカム型の多孔性の単分子膜を鋳型として検討したところ、テンプレート効果がC4~C10のアルコキシ基が置換した分子が形成する単分子膜において発現することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
・テンプレートとなる分子としてアルカンを用いた一連の実験を行い、ある程度の精度でグラファイトやグラフェンを一次元的に精密化学修飾することに成功した。また、アルカン誘導体についても検討を開始し、より高精度での周期的修飾を実現するための素地となる成果を得ることができた。 ・アルカンの他に、デヒドロベンゾ[12]アヌレンが形成する多孔性のハニカム構造をテンプレートとして利用できることを明らかにした。付加物には二次元的な周期が発現した。また、テンプレートのキラリティーが付加物の位置とキラリティーへ影響を及ぼすことを見出した。 ・用いるアリールジアゾニウム塩の種類によっては、周期的な修飾が起こらないことがわかった。 ・付加したアリール基の基板上の位置について原子レベルで明らかにすることができた。 ・付加したアリール基が他の有機分子の自己集合に与える影響を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
・様々なアルカン誘導体をテンプレートとして検討して、より良い精度で付加位置を制御できる分子を探索する。これにより、グラフェンの電子状態を精密に制御する技術を確立する。 ・多孔性の構造をテンプレートとする付加位置制御について、引き続き検討する。特に、キラリティーの伝搬に着目し、ホモキラルなテンプレートの利用について検討する。 ・付加物の周期について、画像解析方法を確立して定量的に評価する。 ・付加物をさらに化学変換可能な官能基を事前に導入しておき、さらなる修飾による三次元構造の作成についても検討する。 ・炭素表面(動作電極)/有機溶媒(アルカンの溶液)/電解質水溶液の二溶媒界面系における電気化学機構を解明する。 ・周期的に修飾されたグラフェンやグラファイトのXPS (ARPES) 測定やFET作成と電気的性質の調査を行い、周期的に修飾されたグラフェンの電子状態を明らかにする。
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