研究課題/領域番号 |
17H04795
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
山田 啓介 岐阜大学, 工学部, 助教 (50721792)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 磁性ナノワイヤー / 磁壁 / 磁化反転 / 磁壁移動 |
研究実績の概要 |
2年目にあたる当該年度の研究成果としては、初年度実施予定の「②磁性ナノワイヤーの試料作製&材料&電気的特性評価」を行うことができた。具体的内容としては、ポリカーボネートテンプレート(PT)を用いて磁性ワイヤー試料を作製し、磁性ワイヤーの直径と長さのアスペクト比に対する磁気特性や磁化反転過程について、実験と数値計算の結果から明らかにすることができた。この成果は、「研究実施計画」を進める上で、土台となる研究結果を得ることができた。また、アルミナ細孔テンプレート(AT)を用いて、磁性ナノワイヤーのアレイ試料において、電気的測定を用いて磁気抵抗効果を測定することにも成功した。今後は、細線と磁場の角度依存性による磁気抵抗の変化の調査や、磁化反転過程における磁壁移動の観測を進める。また、「研究実施計画」に記載した、磁壁電流駆動の観測を目指すための課題としては、一本の磁性ナノワイヤーにおける伝導特性評価を初めに目指すことである。その後、磁壁移動を観測するために、他の金属ホールバーを細線に付着させ、プレーナーホール効果など磁気抵抗観測し、磁壁移動観測を試みる。
本研究課題以外の成果は、5報の論文を発表することができた。これらの成果は、本研究課題にも直接関連のある研究で、内3報の論文は、「磁壁、磁区」に関する論文であり、本研究課題に十分な知見を与えることができた。また他の2報の論文は、「スピン流」に関連した論文と磁性ガーネット材料における物性に関する論文で、本研究課題に関連した内容の研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の進捗状況は、交付申請書に記載した「研究実施計画」と比較すると「やや遅れている」と評価した。その理由は、磁壁電流駆動の観測を実施する際には、電気的測定や磁壁の直接観察が必須で、それらの成果が現段階では、電気的測定の結果が出始めた段階のみであるからである。磁壁の直接観察に関しては、磁気力顕微鏡を用いて昨年度試みたものの、磁壁を直接観察することはできなかった。この理由としては、磁性ナノワイヤーの単離の際に、ATテンプレートがワイヤーに付着している可能性が考えられ、より単離プロセスの改善が必要である。今後は、単一磁性ナノワイヤーの単離プロセスと電気伝導特性の評価を急務に行い、当初の予定である磁性ナノワイヤーにおける磁壁電流駆動観測と物性評価を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、初めに、磁性ナノワイヤーのアレイにおける電気伝導特性、特に磁気抵抗効果に関して調べていく。次に、単一の磁性ナノワイヤーのおいても、微細加工を用いて同様に磁気抵抗測定を行い、磁気特性と伝導特性の相関を明らかにする。同時に、単一の磁性ワイヤーとアレイ状の試料との比較を行うことで、ワイヤー間の相互作用の効果が磁壁移動または磁化反転にどのように影響を与えているかを明らかにしていく。また、磁化反転や磁壁挙動に関しての考察は、マイクロマグネティクスシミュレーションを行い、磁化ダイナミクスを明らかにしていく。
申請書のH31年度の研究計画としては、「⑤多層構造を持つ金属強磁性体ナノワイヤー中の磁壁電流駆動観測」の研究計画がある。今後の方策としては、磁壁移動現象の観測の他に、多層構造を持つ磁性ナノワイヤーにおける巨大磁気抵抗効果の観測などの研究も行い、磁気特性と伝導特性の相関を明らかにしていく。
今後の研究として、本研究課題に知見を与えることのできる他の研究も引き続き行っていく。磁性ナノワイヤーアレイの試料を活用し、強磁性共鳴やスピンゼーベック効果の測定も試していく。これらの研究では、磁化ダイナミクスや界面におけるスピン流の特性を評価することが可能なため、磁性ナノワイヤーのおける磁化とスピン流との相関を明らかにすることができ、本研究課題にも十分に知見を与えることができる。
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