研究課題/領域番号 |
17H04804
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
猪股 直生 東北大学, 工学研究科, 助教 (40712823)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マイクロ温度センサ / MEMS / 細胞 / 微細加工 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き,誘電率温度依存性の大きいBST(バリウム-ストロンチウム-チタン)の適切な成膜条件出しを試みたが,薄膜では,もしくは所有する成膜装置ではバルクの持つ所定の温度特性を得ることが困難であることがわかった.そこで,電気抵抗温度係数の大きい酸化バナジウム(VO2)によるサーミスタを用いたデバイスを検討した.V02の成膜にはゾルゲル法を用いた.一般的にVO2は68℃に相転移温度があり,その近辺(±10℃程度)で大きな抵抗変化が生じる.細胞の有効温度帯は室温~40℃であるので相転移温度を下げる必要があり,タングステン(W)をドープすることでそれが可能である.ゾルゲル法は液作製時に薬品を追加すればWをドープできるため,濃度調整が比較的容易である利点がある.実際に,W濃度を変えて相転移温度の異なるVO2薄膜の成膜に成功したとともに,WドープがないVO2薄膜の場合でも室温~40℃の範囲で他材料よりも高い温度係数を得られることがわかった.また,マイクロ流路を用いて細胞を捕捉するよりも,培養状態の細胞の方がセンサ部との接触面積を大きくすることができる利点,更に,従来得られている知見と比較する際に条件を揃えることができる利点があるという結論に至り,デバイスの構造を大幅に変更した.断熱用薄膜構造上に温度センサを設け,その上面一面に細胞を培養し,偶発的にセンサ上にのった細胞の熱を計測する構想とした.これに合わせた設計,作製方法の確立およびデバイスの特性評価を行った.また,イオン液体の熱電特性を用いた新原理の温度センサに関する研究,真空ポンプや溶液ポンプのオンチップ化を図る研究も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
誘電率の温度依存を用いたBSTによる誘電型温度センサから電気抵抗の温度依存性を用いたVO2によるサーミスタに計画を変更した.本研究計画に適切な成膜手法と条件を見出すことができた.他にも,マイクロ流路から半開空間チャンバへ変更する等,実用性に合わせた計画変更を行うことになったが,最終的なデバイス構造と設計がほぼ決定し,その作製方法を確立することができた.また,作製したデバイスの特性評価を行った.当初の計画どおり,進展している.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,作製したデバイスの特性評価を行う.その後,細胞をデバイス上に培養する条件を,従来研究を元にしながら検討し,単一細胞の温度計測を行う.
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