本年度は骨格筋組織と神経細胞などの他細胞との共培養時に、細胞が受ける形態・機能の影響について評価を行った。 神経細胞との共培養については、骨格筋組織上に神経細胞を設置するだけでは接着率が低く、不安定な骨格筋組織アクチュエータ上では更に接着率が低くなる。そこで、マイクロ流体デバイスにて作製した紐状組織である神経細胞ファイバを作製した。この神経細胞ファイバはその形状から固定することが可能であり、神経細胞単体や球状の神経細胞スフェロイドでは重力によって動いてしまい接着できない条件でも、接着状態を維持可能であると考えられる。そこで、実際にサポーターを用いて神経細胞ファイバを固定することで、骨格筋組織の近傍に設置することで安定して共培養可能なことが分かった。神経細胞と共培養した骨格筋組織が収縮運動することは既に確認しており、本共培養法は神経刺激で収縮運動可能な骨格筋組織アクチュエータ構築に大きく寄与すると考えられる。 さらに、当初の想定していなかった研究展開として、上記の技術を発展させることで、骨格筋組織の両端部に腱組織を構築した筋腱複合組織の構築にも成功した。この時、電気刺激で骨格筋組織を収縮運動させると、筋組織の収縮に伴い腱組織が伸長する様子が確認された。さらに、筋腱複合組織内の腱細胞は張力の方向に進展していることも確認され、筋組織の張力の負荷により腱組織の形態が変化していることが確認された。当該方法で構築された腱組織からはコラーゲンが産出され、組織内が産出されたコラーゲンで満たされていることも確認された。このように、各種細胞にて骨格筋組織との共培養方法を確立しており、高機能な骨格筋アクチュエータ創出に大きく貢献する研究成果になったと考えている。
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