研究課題/領域番号 |
17H04806
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塩見 雄毅 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任講師 (10633969)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ベリー位相 / カンチレバー / トポロジー / ホール効果 / 圧電効果 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、近年物性物理学で注目を集めるトポロジー概念との関係が未だ開拓されていない力学的効果に注目し、電子の波動関数の幾何学的位相(ベリー位相)に由来する新奇力学現象の開拓研究を行っている。今年度の目標は、力学効果を計測するための基本的試料構造となるカンチレバー・金属膜複合デバイス構造の作製手法の確立と、レーザードップラー振動計による力学振動の測定手法の確立であった。 まず、カンチレバー・磁性金属膜複合デバイス構造の作製について、プロセスチャートを作成し、EB蒸着法およびEBリソグラフィー法、気相フッ酸エッチング法等を用いてSOI基板を用いてデバイスの作製を行った。何度かの試行の後にデバイス試料の作製に成功したが、作製した試料においてカンチレバー本体部分を構成するシリコンと蒸着した金属膜の熱膨張係数の差に由来すると思われる反り上がりが見られた。作製したデバイスに対し、磁性金属膜に磁場下で電流を流し誘起される力学振動をレーザードップラー振動計で計測したが、計測誤差の範囲内で有意な信号は得られなかった。一方、上記のようにシリコンでカンチレバー構造を作製して上部に磁性金属膜をつけるのではなく、磁性体を直接FIB法によりカンチレバー構造に加工するやり方で同様の実験を行ったところ、磁性に関係する信号が得られた。この成果について結果を報告すべくまとめている段階にある。 さらに、11月に異動したことに伴い、レーザードップラー振動計による力学振動の測定手法の確立を兼ねた異動先での新たな研究課題として、ベリー位相と関係した圧電効果の研究も開始した。既に、ある条件下では従来圧電材料に匹敵する大きさの圧電効果を示す物質の開発に成功しており、論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に予定した試料構造における測定は試行した範囲内では良い成果を生み出さなかったが、並行して行った別構造における研究がうまくいっている。また、年度途中で異動することとなったが、異動先での研究課題も積極的に進めることで当初想定していなかった新しい研究の芽も出てきている。以上により、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度に得た成果を論文などで積極的に発表していく。加えて、今年度は比較的典型的な磁性物質における研究であったが、当初の研究計画通りに、第二年度は広く物質展開を行うことで研究成果を発展させる。特に、カンチレバー構造を非自明なトポロジカル物性を示す磁性体物質で作製することにより、さらなる研究発展を狙う。
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