研究課題/領域番号 |
17H04811
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺門 信明 東北大学, 工学研究科, 助教 (90466441)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 熱流制御 / 熱マネジメント / ラマン散乱 / スピン熱伝導 |
研究実績の概要 |
電子機器等における高度な集排熱及び熱再利用技術の実現に向けて、熱流を光や電流のように自在に時空間的に外場制御できる材料及び構造の開発を目指した。用いた試料はスピンによる異方的高熱伝導性とその外場制御能が期待されるLa-Ca-Cu-O系物質(以下、LCCOと略記)である。薄膜を高周波マグネトロンスパッタ法及びポストアニールによってガラス基板上に作製した。 研究開始時はレーザー光照射による局所熱伝導率の制御を試みた。ラマン分光により、スピン熱伝導の源となる磁気秩序が高強度のレーザー光照射により低下することを確認したが、熱伝導率の変化が局所的と予想されるため熱伝導率の評価や熱流制御が困難であった。 そこで、多層膜構造を用いた磁気秩序の制御と、それに伴う熱伝導率及び界面コンダクタンスの制御を試みた。具体的には、基板上にITO(透明電極)/SiO2/LCCO/ITOからなるMOS構造を作製した。ITO/SiO2が透明であることを利用し、上下電極間に電圧を印加しながら、SiO2/LCCO界面における磁気秩序をラマン散乱スペクトルにおけるtwo-magnonピークを通してその場観測した。その結果、電圧の正負に応じた磁気秩序のスイッチングを示唆する結果を得た。 熱伝導率の評価方法として、多層膜における熱伝導率及び熱コンダクタンスや局所評価が可能な周波数領域サーモリフレクタンス測定系の構築をおこなった。既にLCCO単層膜についての評価に成功しており、上記多層膜への応用を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LCCO薄膜を作製し、ラマン分光による磁気秩序の観測及び周波数領域サーモリフレクタンス法による熱伝導率の評価に成功した。また、多層膜構造を作製し磁気秩序の電界スイッチングを示唆する結果を得た。以上のことから29年度の研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
多層膜構造に対し周波数領域サーモリフレクタンス法を適用し、電圧印加下の熱伝導変化のその場観測をおこなう。同時に、ラマン分光や電気的特性の変化を詳細に調べ、熱流の電界制御に向けた研究を進める。
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