研究実績の概要 |
平成29年度は、パルス状コヒーレントX線溶液散乱法のための、ナノ構造体付き環境セルを作製することを目指した。独自開発の溶液試料を保持できる環境セル(Micro Liquid Enclosure Array, MLEA)は、エポキシ樹脂による隔壁で500 nmから2 um程度のギャップを持たせながら、厚さ200 nmの窒化ケイ素薄膜を貼り合わせた構造になっている。そのうちの1枚の窒化ケイ素薄膜上に、北海道大学電子科学研究所が共同管理するオープンファシリティ装置を利用した電子線リソグラフィによってナノ構造体を作製した。ナノ構造体の材質はアルミニウム、大きさは直径200~400 nmの円柱で、その厚さは50 nmとした。ナノ構造体の間隔は5 umで作製範囲はMLEAの1つの照射窓よりも十分に大きい100 um×100 umとした。リフトオフのプロセスの際に薬液を70℃程度に熱すること、また洗浄時にアセトン、メタノール、純水をかけ流すことで、薄膜を破壊してしまう超音波洗浄装置を利用することなく、薄膜上にナノ構造体を作製することに成功した。作製したナノ構造体は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy, SEM)によって確認した。さらに、アルミニウム表面にビオチン末端ホスホン酸自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer)の形成することを試みた。ナノ構造体に対して、ピオチンホスホン酸SAM形成処理を施した後、蛍光標識ストレプトアビジンを結合させ、蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、ナノ構造体の間隔と一致する規則的な蛍光が観測された。つまり、ナノ構造体上でのみ、ビオチン末端ホスホン酸SAMが形成され、さらに、そのビオチンと蛍光標識ストレプトアビジンが問題なく結合しているということが分かった。
|