研究実績の概要 |
パルス状コヒーレントX線溶液散乱(Pulsed Coherent X-ray Solution Scattering, PCXSS)法と名付けられた新しいX線イメージング法は、短波長性・超短パルス性・高い空間コヒーレンスという特長をもつX線自由電子レーザー(X-ray Free-Electron Laser, XFEL)と、独自開発の溶液試料環境セル(Micro-Liquid Enclosure Array, MLEA)によって、溶液試料のナノ空間分解能観察を可能にする。本研究課題では、単一試料にX線が照射される確率(試料ヒット率)をフォトリソグラフィに代表される微細加工技術によって向上させることで、高い測定スループットの実現を目指している。平成30年度は、1枚のMLEAに集積されたマイクロ溶液槽どうしを隔てている仕切りの高さと試料ヒット率の関係に着目した。変えることが難しい試料の大きさや溶液中粒子密度にあわせて、仕切り高さを制御し、溶液槽の体積を変化させることで、試料ヒット率の向上が期待できる。リソグラフィ条件を変えながら仕切りの試作を行い、電子顕微鏡や非接触三次元表面形状測定装置で構造を評価した結果、エポキシ樹脂ベースのフォトレジストであるSU-8の粘度や、それを基板にスピンコートする際の回転数を最適化することで、500 nmから2 umまで仕切り高さを制御できることが分かった。また、平成29年度に研究を進めた、ナノ構造体が表面に形成されたMLEAに関する成果を、査読付きの国際学術誌に投稿した。
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