研究課題
パルス状コヒーレントX線溶液散乱(PCXSS)法と名付けたX線イメージング法は、短波長性・超短パルス性・高い空間コヒーレンスという特長をもつX線自由電子レーザー(XFEL)と、独自開発の溶液試料環境セル(MLEA)によって、溶液試料のナノ空間分解能観察を可能にする。令和元年度は、以下の3つの項目で研究を進めた。1.SiN膜からのバックグラウンド散乱の低減:PCXSS法の更なる高感度化・高空間分解能化の実現には、MLEAからのバックグラウンド散乱の低減が必要であることが、実際のXFEL実験を通じて分かってきた。そこで、今までと同様のリソグラフィプロセスで、X線入出射窓として利用しているSiN膜をどこまで薄くできるかを検討した。その結果、厚さが20 nmであってもX線入出射窓の作製が可能であり、かつ、期待通りにバックグラウンド散乱が低減されることを確認した。2.ハイパフォーマンスコンピュータを利用した位相回復計算:XFEL施設SACLAのハイパフォーマンスコンピュータを利用し、平成29年度から積み重ねてきた生細胞や機能性ナノ粒子のPCXSSデータの解析を進めた。取得した回折強度パターンを逆空間拘束として位相回復計算を行い、溶液中での試料像を再構成した。位相回復アルゴリズムにはRelaxed Averaged Alternating Reflections法、Error Reduction法、ならびにShrink Wrap法を利用した。3.研究成果の査読付き国際学術誌への投稿:令和元年度は本研究計画の最終年度であるため、研究成果を査読付き国際学術誌に発表することにも注力した。ナノ構造体が表面に形成されたMLEAに関する成果は、Physical Chemistry Chemical Physics誌の2019 PCCP Hot Articlesに選出された。また、弱散乱物体のXFELイメージング法に関する研究も、査読付き国際学術誌にアクセプトされた。さらに、MLEA作製手順の詳細をまとめた論文も、現在レビュー中である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Physical Chemistry Chemical Physics
巻: 22 ページ: 2622~2628
10.1039/C9CP03658J
AIP Advances (Accepted)
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