当該研究計画では、高強度Ndガラスレーザーと放射光施設(Photon Factory Advanced Ring:PF-AR)の100 psの硬X線パルスを駆使して、レーザー集光照射により発生した衝撃波による圧縮過程で特有の固体の弾塑性転移の観測することを目標に研究を推進した。前年度にPF-ARの時間分解X線測定専用ラインにNdガラスレーザーを整備し構築したピコ秒時間分解ラウエ回折測定と時間分解粉末X線回折測定装置により単結晶シリコン(100)の弾塑性過程の観測を行った。実験条件は高強度Ndガラスレーザーで約10万気圧の弾塑性転移点を超えた圧力域で行い、衝撃波伝搬下における単結晶シリコンのラウエ回折像を取得した。ピコ秒時間分解ラウエ回折により衝撃伝搬方向の歪みと、衝撃伝搬に対して垂直方向の構造情報を分離し時間分解測定することに成功した。弾性域では衝撃波伝搬方向に歪んでいるのに対して、衝撃波伝搬と垂直方向は弾性波に対して遅れて進む塑性波に対応して結晶が不均一化していることが確認された。高強度Ndガラスレーザーと放射光のX線パルスを時間・位置について高精度で制御することで、弾塑性転移の構造変化の時間伸展を観測することが可能になった。開発したタイミング制御装置により任意のタイミングで放射光から得られる100ピコ秒の硬X線パルスを用いて、レーザー衝撃圧縮時における金属の衝撃微細化過程やセラミックスの衝撃誘起相転移のX線回折データを取得をするとともに、データ解析を行った。これにより、衝撃波内部で金属粒子がナノサイズ化をナノ秒の時間で起こすことが明らかとなり、その時生成された転位の密度も精度良く決定することが出来た。
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