研究課題/領域番号 |
17H04828
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石山 智明 千葉大学, 統合情報センター, 准教授 (90616426)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 宇宙物理 / 高性能計算 / ダークマター / 銀河 / 星 |
研究実績の概要 |
以下の研究を行い、査読付欧文論文出版などの成果を挙げた。 (1) 初代星が誕生するミニハローを分解しつつ、赤方偏移z=0での銀河ハロー形成まで追える高分解能宇宙論的N体シミュレーションを実行した。そして数十個程度の銀河ハローの合体形成史を作成した。その上で新しい準解析的初代星形成モデルを構築を進め、モデルのキャリブレーションを進めた。 (2) 2018年度に引き続き、高赤方偏移における銀河形成と、近傍宇宙で観測されている恒星ストリーム構造を比較した。恒星ストリームの統計的空間分布は、宇宙大規模構造と相関し、コズミックフィラメントからのサブハロー降着が強いハローほど、ストリームの向きとハロー長軸が揃いやすい傾向にあることがわかった。結果を投稿論文としてまとめている。 (3)恒星間天体との衝突による低質量初代星への金属汚染の効果を調べた。高解像度の宇宙論的N体シミュレーションを用いて、初代星の軌道を従来よりも精密に取り入れた。太陽近傍では、100m以上のサイズの恒星間天体との衝突は、典型的には1000年に1回程度の頻度で起こることがわかった。結果をまとめた論文が Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 誌にて出版された。 (4)初代星由来の金属が赤方偏移3の宇宙でどのように分布しているか、高解像度の宇宙論的N体シミュレーションを用いて調べた。低密度領域で重元素が銀河由来のものと比べ卓越して存在すること明らかにした。次世代望遠鏡による分光観測で、クェーサーのスペクトルを通してこれらの重元素を検出できる可能性がある。結果をまとめた論文がMonthly Notices of the Royal Astronomical Society 誌にて出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベースとなるシミュレーションデータの整備が完了したのに加え、準解析的モデルの構築が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度はモデルを拡張し、将来の観測のための理論テンプレートを整備する。具体的には、国立天文台すばる望遠鏡に搭載される予定の主焦点超広視野分光器 PFS による、銀河系の金属欠乏星の分光観測と比較するために、銀河系内に生き残った初代星の分布を調べる。モデル依存性を調べるとともに、先行研究では未解決であった、銀河系の進化過程や周囲の環境が星の分布に与える影響を明らかにする。
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