宇宙誕生直後の10億年は、その後の全宇宙進化を規定することになる極めて重要な黎明期である。星と銀河、そして10億太陽質量にも達するような巨大ブラックホールの初代の種族が、この時期に形成されたと考えられている。本研究は、最先端の観測機器を用いたかつてない超高感度 ・広視野の探査観測を実現し、宇宙黎明期における巨大ブラックホールと母銀河の普遍的な姿を、世界に先駆けて明らかにしようとするものである。前年度には、日本のすばる望遠鏡に搭載された広視野カメラ Hyper Suprime-Cam (HSC)による広域探査データを用いて、宇宙年齢8億年前後に対応する赤方偏移6の宇宙に存在する巨大ブラックホールの探索法の確立を行なった。当該年度にはこの手法をHSCの大規模データに適用し、多くの候補天体を抽出して、すばる望遠鏡および大カナリア望遠鏡を用いた追分光観測を実施した。スペクトル計測の結果、候補天体の半数以上が真の遠方クエーサーであることが確認され、大きな遠方クエーサーサンプルが確立された。それらは先行研究で得られた遠方クエーサーより1桁近く光度が低く、すばる望遠鏡とHSCによる探査能力の高さを証明している。また平均的に、巨大ブラックホールと質量降着効率の低い種族が発見され始めたことになる。発見されたクエーサーを用いて、光度ごとの数密度を表す光度関数を導出することに成功した。また光度関数の積分から、銀河間空間の電離に使われる光子数密度を計算し、クエーサーは宇宙再電離に支配的な寄与をし得ないことを見出した。
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