宇宙網は冷たい暗黒物質による構造形成パラダイムから予言されるネットワーク構造である。そして、銀河はネットワーク構造の接点に向かって流れ込むガスによって形成されると考えられている。したがって、銀河形成を理解するには宇宙網の詳細な観測的研究が重要である。本研究では、すばる望遠鏡超広視野カメラ(HSC)を用いて、遠方宇宙の原始銀河団の宇宙網を水素ライマンアルファ輝線をプローブとした探査を推進する。これにより、銀河形成期における宇宙網の性質を世界に先駆けて明らかにし、現在の構造形成パラダイムの観測的検証を行う。
初期宇宙の広視野高感度宇宙網観測に向けて、HSCに搭載する専用狭帯域フィルターNB0497を製作した。このフィルターは宇宙網が最も観測しやすいと考えられる原始銀河団の赤方偏移された水素ライマンアルファ輝線に合わせて設計されている。本NB0497フィルターを用いたすばるインテンシブ枠プロポーザル(98時間)がS21A期に採択され、2021年から2023年にかけて観測が行われることになった。また国際共同研究として、カナダの研究者と協力して、カナダフランスハワイ望遠鏡による紫外線(Uバンド)観測の提案も採択された。以前のすばる望遠鏡のシュプリームカム(S-Cam)でライマンアルファ輝線観測データを再解析し、原始銀河団中心部に見えてきた宇宙網の兆候に対して、ケック望遠鏡LRISデータの解析、および、アルマ望遠鏡と欧州南天天文台VLT/MUSEによる追観測を行い、サイエンスに論文を出版した。
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