研究課題/領域番号 |
17H04832
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
石川 真之介 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (10724685)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 太陽物理学 / 宇宙物理 / 宇宙科学 / X線天文学 / ロケット |
研究実績の概要 |
平成29年度は、平成30年度8月に予定されている太陽高感度X線観測ロケット実験 FOXSI の3回目の打ち上げ (FOXSI-3) に向け、搭載観測機器の製作を行った。国際共同ロケット実験である FOXSI-3 のなかで、日本のチームは焦点面検出器を担当しており、搭載品としてファインピッチ・低ノイズの CdTe 半導体硬X線検出器と、高速読み出しが可能な裏面照射型 CMOS センサーを用いた軟X線撮像分光システムの製作を行った。今回開発した CdTe 検出器は、FOXSI-3 の前回のロケット実験である FOXSI-2 において製作した CdTe 検出器を発展させたもので、揃った性能のものを複数製作できるよう、実装方法を工夫している。製作後は性能評価試験を行い、必要なエネルギー分解能、位置分解能を達成していることを確認できた。この成果は現在共著論文として投稿中である。FOXSI-3 の打ち上げでは、今回開発した CdTe 検出器を4つ搭載する予定である。CMOS 軟X線計測システムについては、高速 CMOS センサーから出力される大量のデータをロケットの観測時間中保存するシステムを実現し、CMOS センサーからデータレコーダまで end to end のスループット150 MB/s を達成した (Ishikawa et al. 2018, NIM A, accepted)。この観測システムを搭載することで、FOXSI-3 で初めて太陽の2次元撮像分光観測を実現する。これらの機器は、ミネソタ大学にて米国チームが担当する機器とかみ合わせ試験を行い、想定通り動作することを確認している。 FOXSI-3 ロケット実験の準備と並行して、FOXSI の観測装置を発展させた装置を用いた観測衛星計画の検討を進め、JAXA の公募型小型ミッションの提案募集に応募した(PhoENiX 計画)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定であった FOXSI-3 ロケット実験の搭載品開発が順調に進み、無事完了させることができたため、FOXSI-3 打ち上げ後から開始する計画であった衛星計画を含む将来の観測に向けた検討を、平成30年度の科研費を前倒しすることですでに開始しており、予定よりも早く計画が進んでいる。また、本科研費応募時点では将来的に提案を構想していたのみであった衛星計画の検討を加速し、PhoENiX 計画として JAXA 公募型小型ミッションとして応募するに至っている。衛星ミッション提案の母体となるワーキンググループ設立から計画提案まで1年未満という非常に短いタイムスケールで進んでいるが、これは、FOXSI-3 搭載 CdTe 硬X線検出器と CMOS 軟X線計測システムの製作が順調に進み、将来の衛星搭載品開発に向けた目処が立ちつつあることがベースとなっている。また、PhoENiX の提案メンバーには、FOXSI ロケット実験の主要メンバーが加わっており、これは本科研費による海外渡航によって緊密に情報交換を行うことで実現できた成果である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も研究計画に従い、太陽高感度X線観測ロケット実験 FOXSI-3 と、X線・ガンマ線観測衛星 PhoENiX 計画を進めていく。FOXSI-3 による高感度X線撮像分光観測の実現により、巨大フレア発生時以外の太陽における高エネルギープラズマの探査をこれまでにない精度で実現する。FOXSI-3 ロケット実験は2018年8月に予定されており、打ち上げに向けて日米の観測機器の組み上げや、性能確認試験を進めていく。打ち上げに向けては、ひので衛星をはじめとする太陽観測衛星との同時観測の準備も進める。打ち上げ後は、観測データの解析を開始し、軟X線と硬X線の高感度撮像分光観測データを用いて太陽における高エネルギープラズマを評価していく。機会および進捗状況に応じて、共同研究を行っている海外の研究機関に滞在して研究することも視野に入れている。 FOXSI-3 ロケット実験の実施と並行して、PhoENiX 衛星計画を進める。PhoENiX に関する検討、観測機器の試作品製作、および国際調整の一部に本科研費を充てる。特に、PhoENiX に搭載予定の軟X線高速撮像分光観測装置は技術的にも新しいものであり、その実装は FOXSI-3 での経験が大いに生かされると考えている。FOXSI-3 と PhoENiX という関係の深い2つの観測計画を同時に進めることで、PhoENiX におけるリスク低減と観測の最適化を図っていきたいと考えている。
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